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アイヌ民族博物館を訪ねる

 
 

 
 


アイヌ民族博物館
 

 
 

今回は以前札幌講演会を行っていた際に、スタッフの皆さんと尋ねた白老町にあるアイヌ民族博物館の様子をお伝えします。そこには、アイヌの人々の住居や衣服、装身具、生活用品の他に、先住民の生活に密着していた踊りやそれに使う竪琴などの楽器が展示されていました。

そうした展示物を目にするとアイヌの人々が自然を愛し、神々に感謝し、自分たちの喜びや悲しみを神々と分かち合うために、様々な機会を設けて踊って 来ていたことが分かる。また日常生活や神事に使っていたトンコリと呼ばれる弦楽器の素晴らしさには驚かされる。

また、樹皮や草皮、木綿皮などで作られた衣類を見ると、彼らが持っていた知恵がいかに素晴らしいものであるかも分かる。鮭の皮を使って作った長靴はその中の代表的ものである。

 




写真A (全てクリックで拡大)
 



写真B

 


家の造り

家(チセ)は、茅(かや)やヨシ、笹などの葉や樹皮などを用いて、長軸が東西を向くように建てられ、西側には 「セム」よと呼ばれる玄関兼物置がついていた。一般の人々の住む家の広さは、おおよそ奥行き7m×幅5m。族長の家は、一回り大きかったようである。

家族構成は親子2世代、親、子、孫の3世代が同居。子供たちが成長し家が狭くなると、長男から順に別に家を建てて独立したり、祖父母が家の近くに小さな別棟を建てて住んでいたようである。

窓は3つあり、そのうち入って正面(東)にある窓はロルンプヤといわれ、神々が出入りする窓、また儀礼のとき用いる道具を出し入れする窓として神聖視され、決して覗いたりしてはいけないとされていた。

     (写真Bは『蝦夷島奇観』より転写)
 

 
 

 




写真C
 



写真D


家の内部

 

家の中に入ると、入口の近くに炉が切ってあり、炉の中には、火バサミ、灰ならし、灯火用具などがおいてあり、さらに炉の北東角には火の神様に捧げられたイナウ(木幣)が立っていた。

炉の上には、肉や魚を干して薫製にするための炉だなが家の梁からつり下げられていて、その中央から鍋をつるすための炉鉤が下げられていた。

家の主人夫婦は炉の右座(シソ)に座り、子供たちや客人は左座(ハリシソ)に座るのが習わしであった。儀式の時、女性は上座(ロルンソ)に座ってはならないとされていた。

シソの奥にはイヨイキ とよばれる宝壇があり、和人との交易などによって得た行器や杯、刀、鉢、矢筒などの宝物が置かれていた。

                     (写真Dは『アイヌ文化の基礎知識』より転写)

 

 

 




写真E
 



写真F



写真G


踊り

 アイヌの人々は、神々への感謝の気持ちと、自分
   たちの喜びや悲しみを神々と分かち合うために、
様々な機会に踊ってきた。

 (写真F、Iは『蝦夷島奇観』より転写)
 

 



鮭の皮で作った長靴

この長靴を見ていると、アイヌの人々の持っていた知恵と技の素晴らしさに驚かされる。

 

 




写真H
 



写真I


トンコリ(カー)楽器
 

 

世界の先住民の中で楽器を持たない民族は先ずいないだろう。

アイヌの楽器の中では口琴とか口琵琶と呼ばれる「ムックリ」が有名であるが、トンコリもよく演奏される楽器であったようだ。樺太アイヌではトンコリと呼ばれ、北海道では北西部のみに存在し、カーと呼ばれていた。(カーは糸と弦のこと)

長さは1m前後、幅が15センチほどの竪琴で、3弦、4弦、5弦の3種類があり、腰を下ろし肩にかけて指で演奏する。トドマツ、イチイ、ナナカマド、ホウノキなどの素材から作られていた。

写真Iの左下段と右下段はムックリとトンコリを弾く人。
 

 

 


写真J
 

写真K

 

アイヌの装身具
タマサイ

大切な儀式の時には、女性は玉飾りや耳飾り、首飾り、腕飾りをして、鉢巻きをした。

写真は「タマサイ」というガラス玉が使われた胸までとどく首飾り。

タマサイは大陸からもたらされた交易品であるが、中には、松前藩が密かにつくってアイヌ民族にもたらしたものもあったようだ。

 

 


アイヌの衣服

アイヌ民族の伝統的な衣服を素材別に大別すると、次の5種類になる。

@ クマ、シカ、キツネ、イヌ、アザラシ  などの皮から作った獣皮衣
A 海鳥、水鳥の皮で作った鳥羽衣
B サケ、マスの皮で作った魚皮衣
C 樹木の繊維からつくった樹皮衣
D 草の繊維から作った草皮衣

これらのうち、@〜Bの伝統は現在には伝えられていない。この他に、外来の衣服としては木綿衣がある。

 
         

 


写真L
 



写真M

 


樹皮衣

写真Kは、今日伝えられている代表的な樹皮衣で、そのなかでも一般的に知られているアットゥシ 織。これはオヒョウなどの木の樹脂からとった繊維によって織られた衣服である。

草皮衣

写真Lは、イラクサの繊維で織ったもので色が白く、レタペ(白いもの)と呼ばれている。これは樺太アイヌが多く用いた衣服で、これらは切伏や刺繍文様を施して晴れ着として着用される一方、文様のない普段着としても着用されていた。

木綿衣

写真Mは、木綿衣の一つで、細い切伏布をおいて精巧に刺繍されたルウンペと呼ばれる衣服。太平洋の噴火湾沿岸及び室蘭、白老、登別などの限られた地域にしかその伝統は残されていない。

(写真Lは「アイヌの歴史と文化」Uより転写)
 

 

 

次回はアイヌの入れ墨と服飾文様からみた、アイヌ人とムー文明や琉球諸島とのつながりについてお伝えします。

 




 

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