中国南部を流れる長江(揚子江)一帯が大雨に見舞われており、上流の大都市である重慶では新たに住宅700余軒が崩壊し4人が死亡、4300人が避難している。また、中・下流地域でも、950余軒が崩壊し5人が死亡、6万5000人余が緊急避難している。
問題の長江ダムであるが、19日に164m近くまで達したあと一旦退いた水位は、再び162.5mまで上昇、ダムの最高水位である175mまで12mまで迫っている。中国水利当局は1秒当たり3万8000トンの水を流して水位調整に当たっているが、流入量は1秒当たり6万トンに達しており、排出量の倍近くに達している。
中国のSNSでは「三峡ダムが崩壊した場合、50キロ離れた宣昌市は30分間で深さ10mの水に浸かり、武漢市一帯では深さ5mの水に浸かることになりそうだとする情報を拡散。これに対して中国政府は「三峡ダム崩壊説は虚言だ。500年間は崩れることはない」として、SNSで拡散したシミュレーション映像のリンクを遮断している。
我が国もこれから先数日は雨の日が続くようであるが、問題は長江上流の雨がこれから先どれだけ続くかである。仮に、12mの水位上昇がないにしても、1秒当たり3万8000トンの水を流し続けるようなら、下流の都市の水位は上がり続けるだけに、その被害は拡大する一方である。
何より心配なのは長江流域の農地の崩壊である。この流域では中国全体の農作物の40%程が生産されているだけに、中国の今年の収穫量の激減は間違いなさそうである。もう一点気になるのは、長江下流の上海地域に密集した9基の原発に与える影響である。我が国の福島原発が浸水して原子炉の冷却機能を失ったのと同じ事態が、上海において再現される可能性があるからである。
これから先、三峡ダムの崩壊という大惨事からなんとか逃れて、私の心配が杞憂に終わったとしても、最近テレビに映る習近平主席の歪んだ顔を見ていると、中国の近未来が一段と厳しくなっていくことは、間違いなさそうである。