今、米国では先日亡くなった連邦裁判所の女性判事の後任者を巡っておかしな事態が起きている。というのは、これまでの事例では判事が亡くなった場合には何か月かかけて大統領が命名することになっているのだが、今回はまだわずかな日数しかたっていない上に、大統領選挙の真っ最中だというのに、トランプ大統領は急いで指名しようとしているのである。
その理由について、大統領は今回の選挙では選挙結果を巡って法廷闘争が起きる可能性が強いため、判事の後任を急いで指名する必要があるのだとして、26日には新しい判事を発表することを明らかにしているのだ。
しかしその裏に、自分の大統領再選のための思惑が隠されていることは明白である。彼は今回の選挙では敗北する可能性が高いことを認識しているため、自身にとって不利な郵便投票などを理由に選挙結果を無効と主張し、連邦最高裁判所による判断に持ち込もうとしているのである。彼は判事の後継者に意の通じた人物を送り込むことによって、自身に有利な判決が下ることを期待しているのだ。
実は、そうしたトランプ氏の意図が明らかとなる驚くべき発言が、投票日を6週間後に迫った23日に、飛び出したのである。ABCテレビの記者が「大統領選挙で敗北したら平和的な政権交代を約束しますか」と質問したところ、彼は確約を拒んだのである。
つまり、自分が勝利者とならなければ選挙結果は受け入れないというわけである。それはその後の発言がはっきりと物語っている。「疑わしい郵便による期日前投票を取り除かない限り、政権交代は行わない。はっきり言うなら、政権は今のまま継続されることになるだろう」。
郵便投票がバイデン氏有利に働くことになるだろうと感じているトランプ氏は、これまでにも再三「郵便投票は広範囲な選挙詐欺になる」と主張して来ているが、現実には、郵便投票は既に多くの州で行われていてそれを止めることは出来ないため、もしもバイデン氏の当選が発表されたら、選挙後ただちにそれを逆手にとって、その無効性を理由に最高裁判所の裁定に持ち込もうとしているのである。
彼の発言を聞いていると、バイデン氏の投票が多数を占めた時には、その選挙結果を認めず 連邦最高裁判所による選挙結果の無効判断によって、政権の継続を勝ち取ろうとしている意図が見え見えである。連邦最高裁判所がなぜ彼に有利な最低を下すことになるか? それを理解するには20年前にさかのぼる必要がある。
実は20年前の2000年に行われたゴア副大統領とブッシュ氏との間で争われた大統領選挙が大接戦となり、ゴア陣営がフロリダ州での疑問票の数え直しを求める訴えを行ったところ、フロリダ州の最高裁はこれを認めたものの、連邦最高裁判所は数え直しに疑問を呈する判断を示し、ゴア氏はその判断を受け入れて、ブッシュ氏の勝利が決まった事例があるのだ。
そうした経緯で当選したブッシュ大統領がもたらしたものは、2001年の同時多発テロをきっかけに始まったアフガン・イラク戦争であり、その後に続いた中東諸国間の戦争であった。そして、それがもたらしたものがいかに恐ろしいものであったかは、現在の中東の悲惨な実態が如実に物語っている。
それを考えると、今回の大統領選の結果が連邦最高裁判所の判定に持ち込まれたら、米国とその国民が20年前と同じ道を選ぶことになる可能性は大きそうである。本の一部の人間によって大統領を決めることになるからである。
前回、ゴア氏が連邦最高裁判所の主張を受け入れて身を引いたのには、自身の命を守るためと、ノーベル平和賞の授与の約束があったからではなかったか、という点について、既にお伝えして来た通りである。
こうした点を頭に入れて、今回の選挙結果や最高裁の判断を見てもらえば、米国を裏から動かしている「闇の勢力」が、米国を使って世界をいかに動かしていこうとしているかが、分かるはずだ。「闇の勢力」にとっては富と名誉を重んじるトランプ氏は、役に立つ大統領なのであろう。
いずれにしろ、前回「衰退に向かう米国の象徴・トランプ大統領」で記した通り、これから先、米国とその国民を待ち構えているのが「国家破綻」という厳しい未来であり、その結果、チリと化す人々が数多く出てくることには、変わりはない。善因善果、悪因悪果という因果応報は宇宙に及ぶ鉄則であるからである。