イスラエルとUAE、国交樹立
世界が注目する今後の中東情勢への影響
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イスラエルとUAEとの国交樹立の裏には、イスラエルとイランの対立があった。
UAEも周辺諸国に影響力を拡大するイランには、脅威を感じ始めているようである。 |
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先日、イスラエルと対立関係にあるアラブ諸国の中のUAE(アラブ首長国連邦)がイスラエルと国交を正常化したことは、世界に大きな驚きと衝撃を与えるところとなった。
イスラエルとアラブ諸国は1942年の第一次中東戦争以来、敵対関係にあり、エジプトとヨルダン以外の国々は国交は結んでいなかったからである。
それは、イスラエルがパレスチナに対する占領政策を止め、パレスチナ国家が樹立されない限り、外交関係を樹立しないと一致団結して来ていたためである。
それではなぜそれに反して、UAE(アラブ首長国連邦)はイスラエルと国交を結ぶことになったのか?。それには幾つかの理由があったようであるが、その中で最大の理由は、UAEはこれまで石油産業や観光業などに依存してきていたが、コロナ禍によってそれだけではやっていけなくなってきたからである。
そのため、豊かな経済力を持っているイスラエルと貿易面での交流を活性化させたり、また国土の大半が砂漠であるため、イスラエルが持っている砂漠で野菜や果物を育てる技術などを取り入れて、自国産業と農業を活性化させようとしたようである。
また一方、イスラエルのネタニヤフ政権は核開発を進め弾道ミサイルを保有しているイランに対して、国の存亡を脅かすとして危機感を持っていたため、イランとは地中海を挟んで目と鼻の先にあるUAEと友好関係を結ぶことは、イランをけん制する上で有利に働くと考えたようである。
今回のUAEとイスラエルとの国交樹立に対して一番衝撃を受けたのは勿論パレスチナであった。
ヨルダン川西岸地区では早々に抗議集会が行われ、アッバス議長はUAEが事前の相談もなくイスラエルとの国交正常化に合意したことに強い反発と憤りを示して、UAEから大使を召還する措置をとるとの声明を発表している。
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UAEに対して強く抗議し大使の引き上げもあり得ると語るパレスチナのアッパス議長。
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パレスチナでは強い抗議活動が行われた。
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イラン政府も今回の国交樹立は中東の和平を脅かす大きな過ちであり、
ペルシャ湾一帯にイスラエルの足掛かりを作らせてはならないと、強く反発。またトルコのエルドアン大統領もパレスチナの意思が無視されているとして反対し、UAEとの国交断絶の可能性もあると発言している。
こうした情勢の中、国際社会も今回の国交樹立は、パレスチナ国家を樹立してイスラエルと共存させる「二国家共存」という中東和平の大目標が危なくなったとして、他のアラブ諸国の中で同様な動きが出ないか懸念しており、成り行きを見守っている。
いまパレスチナや国際社会が一番懸念しているのは、イスラエルの占領政策を止めさせ、パレスチナ国家を樹立するまでイスラエルとは外交関係を結ばないとするアラブ諸国の同盟が、今回の国交樹立によって反故にされてしまったことと、ネタニヤフ首相が進めているパレスチナ領土の占領政策がどうなるかという点である。
こうした懸念に対してUAEのムハンマド皇太子は、今回の国交樹立に際しては、「イスラエルがヨルダン川西岸地区の併合計画を一時停止すること」を条件としたとして、パレスチナに対する裏切り行為ではないと発表していた。
ところが、その発表の10分後には、ネタニヤフ首相は「国交正常化と併合は無関係である。併合は予定通り進める」と語っていたのである。これがネタニヤフという人物の真の姿であり、そこまでを見抜けなったのがUAEのムハンマド皇太子だったというわけである。
だから、パレスチナのデモに参加した男性は、「今回の行為はパレスチナ問題に対する裏切り行為であり、アラブ諸国の合意に対する違反である」と語り、また別の女性は「UAEの皇太子は、私的な利益のために国交正常化に踏み切ったのです」と語っていたのである。
今回の国交樹立の後ろには「対イラン包囲網」の構築などイスラエルに露骨に肩入れしてきているトランプ大統領が深く関わっていた
ことは確かであるだけに、もしも、11月の大統領選挙でトラン氏の再選がなった時には、事態はさらに悪化することになりそうである。
UAEの隣国であるバーレーンやオマーンなどもイスラエルと国交正常化に動きに出す可能性もあり、その際にはこれまでのアラブ諸国の一致団結したパレスチナ支援政策は瓦解し、パレスチナ人の国家の樹立の夢ははかなく消えてしまうことになるかもしれない。
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パレスチナの抗議活動に参加した人々は写真に記したように語り憤りを露わにしていた。
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