大荒れの米大統領選討論会
「嘘つきめ」、「黙れ」の非難合戦に終始
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覇権国家の大統領選とは思えない非難合戦に終始したトランプ氏と
バイデン氏の討論会は、国民に失望の渦を巻き起こした。 |
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いよいよ今日から10月である。
昨日のトランプ大統領とバイデン前副大統領とによるテレビ討論会。読者もご覧になられたことと思うが、なんともはや、ひどいものものであった。
討論会などではなく、「嘘つき」「黙れ」を繰り返す非難合戦で、とても世界に冠たる覇権国家のトップを争う者同士の論戦とは思えるものではなかった。
他国の人間がとやかく言うことではないかもしれないが、我々人類の明日の命運を左右する覇権国家のトップを決める選挙討論会である限り、関心を持って見聞きせざるを得ず、1時間半に及ぶ討論会を生中継で見ることになった。
しかし、見終わった後は心が汚された思いで気分が悪くなってしまった。米国における世論調査でも、70%の人が「討論を聞きイライラした」と回答していたところを見ると、私と同様に感じていた人が多かったようである。
新型コロナウイルスを巡る論争においては、バイデン氏が「貴方は既に2月の時点でどれだけ危険であるか、十分に知る立場にいながらそれを国民に伝えず、対応策をとらなかった」と指摘。それに対してトランプ氏はなんと「私が国を閉鎖しなかったら、数百万人が死んでいた」と自慢し、「感染拡大は中国のせいだ」と矛先を中国に向けていた。自分の非など一切認めようとしないのだから、唖然(あぜん)としてしまう
論戦を聞いていて特に気になったのは2点。トランプ大統領のコロナ対策の遅れに対する謝罪の言葉が全くなかったことと、これから行われようとしている選挙の結果を、受け入れようとしない態度であった。
米国のコロナ感染者数は既に7400万人に達し全世界の感染者の30%を占め、死者数においても20%の21万人に達しているというのに、自身の取った行動の非を一切認めることなく、矛先を中国に向けているのだからどうにもならない。トランプ支持者はこうした発言を一体どう受け止めているのだろうか?
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今回の討論会に勝者はない。
国民の70%は討論を聞いて「イライラした」と語っている。
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20年前のブッシュ・ジュニアとゴア氏の選挙では、投票結果が出た後にゴア候補がフロリダ州の疑問票を巡って連邦最高裁判所に提訴する事態が発生したが、それは投票が行われた後のことである。今回はまだ選挙が終わっていないというのに、選挙結果を受け入れられないというのだから、なんともはやおかしなことである。
トランプ氏には、事前の郵便投票が民主党のバイデン氏に有利なることが分かっての発言だと思われるが、現在行われている事前投票を受け入れ難いとする発言は、とても現職の大統領のする発言ではない、と思われるがいかがだろうか。自分自身の統治が十分に出来ていないことを、自ら認めていることになるからである。
米国のCBCニュースは討論会後に行った世論調査で、勝者はどちらであったかについての結果を上の図のように伝えている。この数値は、これまでの両候補に対する支持率とほぼ同じであることを考えると、今回の討論会はどちらの候補者にとっても、さして役に立つ討論会ではなかったようである。
今回の討論会に対して、米国内や英国などのマスコミは、騒がしいののしりあいに終わったとする見方で一致しているが、今回の討論会はかねてからお伝えしてきているように、米国社会の分断の深さが深刻化していることを示しており、どうやら、遠からずして覇権国家の地位を失うことになるとする考えが、一段と現実味を帯びて来たようである。
特に気になったのは、討論の中で極右団体である白人至上主義団体・ブラウドボーイズの行為を容認するトランプ大統領の発言であった。これには共和党内部からも強い批判が出たため、大統領はすぐに取り消し的な発言を行っているが、こうした発言を聞く限り、もしも彼が再選されるようなことになった時には、二分された国論は頻発して来ているデモや騒動に火をつけ、覇権国家の衰退への流れは一段とスピードと激しさを増すことになりそうである。
我々は今、かっての周辺国を支配していたローマやギリシャが、その地位を投げ出すことになったのと同じ世界を、目にしているようである。
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