地球温暖化が進む地球。そうした地球で今最も温暖化が顕著になっているエリアの一つが北極圏である。先日、ロシアテレビはシベリアの広い範囲で今年1〜6月の平均気温が、1981〜2010年の同期間の平均と比べて5度以上も高かったことや、北部の
サハ共和国のベルホヤンスクで、気温が38度という北極圏で観測史上最も高い記録が観測されたことを伝えていた。
ベルホヤンスクは定住者のいるエリアで世界で最も寒さが厳しい地として知られており、冬の気温は−50度は当たり前、−72.1度記録した極寒の地であることを考えると、6月末の時点で+38度という気温がいかに異常であるかがお分かりになられるはずである。
シベリアで続くこうした異常な高温の影響は、山火事や永久凍土の喪失など広範に及んでいるが、こうした悪影響は人間にだけでなく、北極圏に生息する動物にも及んでいるようである。その中でも特に大きな影響を受けているのがホッキョクグマである。
北極海に浮かぶ島や海氷はホッキョクグマたちが狩りをし、休息し、また子育てをするために必要不可欠な場所であるが、実はホッキョクグマはアザラシを餌としており、そのアザラシを襲うためには氷が不可欠であるのだ。
ところが、ホッキョクグマは餌とするアザラシより速く泳ぐことが出来ないのだ。そのため通常は氷の上に穴を作ってその中で待ち伏せし、アザラシが海の中から上がってきたところを襲う、とい
った狩りをしているのである。また、時には氷の上を歩きまわり、その下を泳いでいるアザラシを嗅ぎ付け、氷を破って捕まえることもあるようだ。
いずれにしろ、ホッキョクグマは海面に氷が張っていないと餌をとることが出来にないというわけである。またオスとメスとの出会いも海氷の上で行われるため、氷が減るということはホッキョクグマの繁殖にも大きな
悪影響を及ぼすことになるようである。
そのため、氷のない期間が長くなればなるほど、ホッキョクグマが減少していくことは避けられなくなってくる。 いま全世界のホッキョクグマの生息数は2万5000頭程と推定されているが、現在の温暖化がこのまま続くようだと、21世紀の半ばにはホッキョクグマの生息数は
現在の3分の1にまで減ってしまうだろうと、国際自然保護連合(IUCN)は警告している。
今は北極に向かうロシアの客船が他の目的に利用されてしまっているため、もう北極を訪ねることなど出来なくなっているが、幸いにも18年前に北極点に立った折に、目にすることが出来た白熊の親子の姿が脳裏に焼き付いている私にとって、あの親子の白熊たちが消えて行ってしまうのかと思うと、心が痛んで悲しい気持ちになってくる。
温暖化によって被害を受けているのは北極圏の動物たちだけではない。温暖化をもたらした我々人間たちにもそのカルマが及んで来ようとしているようである。温暖化によって北極や南極の氷床や氷河が融解し海水面が上昇したことによって、大海の小さな島に住む人々は家の中まで海水が入り、住むことが出来なくなっている。
数日前のニュースは海面上昇の影響は世界に冠たる米国のニューヨーク市にも及んでいることを伝えていた。大西洋の東海岸沿いの海面上昇幅は、1920年代より平均で約33センチ上昇しており、今年は最高記録を更新していることを伝えていた。
海岸沿いの道路に水があふれる現象は、2000年代初めは年に5回以下であったが、昨年5月から今年の4月までの12カ月で10回に達しているようである。ここ数年、
北極と南極の両極の氷の融解は勢いを増して来ていることを考えると、これから先、道路がだけでなく建物の中への浸水も避けられなくなって来るに違いない。
そうなればどんなに高い高層ビルと言えども利用できなくなってくる。その結果、街中を歩く人の数は遠からずして、消えていくことになりそうである。今回、コロナのパンデミックがニューヨークを襲い、ロックダウンにより人々がにぎやかな街中に出れなくなったのは、数年先、十数年先のニューヨークのそうした姿を教えてくれているのかもしれない。