コロナウイルスで危機に陥った観光地
ギザのピラミッド周辺で餓死するラクダと馬
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ピラミッド近くの路上でゴミをあさる馬。あばら骨が浮き出し、やせ細った姿が痛々しい。 (2020年6月30日、ギザ、朝日新聞北川学記者撮影) |
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世界的に観光業が国を支える大きな役割を担っている国は多い。ヨーロッパのイタリアはその代表例。新型コロナウイルスの感染がピークを過ぎたとしてEU間の人の行き来が始まったものの、
再び感染者が多発し始めているとして、イギリスがイタリアからの帰国者に対して感染していないことを確認するために、2週間ほどの拘留措置をとることになった
。
イタリアにとって、イギリスは最大の観光客を送り込んでくれていた国の一つであったため、観光業者の痛手は大きく、経営破たんに陥る店舗が続出し始めているようである。苦境に陥っているのはイタリアだけではない。中東や中南米などの新興国や発展途上国の観光地もまた同様である。
その代表的な国の一つがエジプトである。ロックダウン(都市封鎖)などの厳しい措置を解除し、観光客の受け入れも始めたものの、国外からの観光客が訪れないため、観光業に携わる人たちにとって厳しい状況が一段と強まっており、我慢の限界に達して来ているようである。
そうしたニュースの中で私が一番ショックを受けたのが、エジプト・ギザの3大ピラミッドに近い町の観光客が消えた路上で、3頭の馬が散乱したごみ袋に鼻先を押しつけ、食べ物を探している光景であった。
それらの馬たちは、ピラミッドなど世界遺産の見物に来る外国人を背中に乗せたり、馬車を引いたりする馬たちであったが、3頭ともあばら骨が浮き出し、その姿は写真でもわかるほどにやせ衰えており、路肩には1頭の雄馬の死骸が横たわっていた。
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こうしてゴビ砂漠を案内してくれていたラクダたちが餓死していくニュースに、心が痛む。
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ピラミッド周辺には、1400頭ほどの馬とラクダがいる。彼らは住民が日銭を稼ぐための大切な
働き手であるが、飼育組合長のラマダン・タルトゥールさん(50)は「ロックダウンで海外からの観光客が激減し3カ月で40〜45頭の馬と、9頭のラクダが飢え死にした。家族を養うため、動物を売り払った人も
出てきている」と話していた。
ピラミッドを訪ね、砂漠の広がるギザ台地を散策する時にはいつでも、その背に載せてもらっていた私にとって、ラクダや馬たちが食にありつけず、やせ衰えて死んでいく姿を思い浮かべるだけで、心が掻きむしられる思いである。
かって起きたカイロ市での爆弾テロの時も観光客が激減したが、その際に訪れた私は通常時には許されない貴重な体験、ピラミッドへの登頂や地下への探索などが出来た。しかし、今回はコロナウイルス騒動では国を離れることが出来ないのだから、家にこもっているしかない。
これから先、コロナウイルス騒動が簡単に沈静化することはあり得ないだけに、エジプトだけでなくペルーのマチュピチュやナスカの地上絵や、メキシコやグアテマラの古代遺跡などを訪問することは不可能である。ということは、世界各地の観光地で観光業を生業としている人々は皆、
生計が成り立たなくなってくるに違いない。
生きていけなくなるのは、人間だけではない。中南米の観光地にいるアルパカやリャマ、ピクーニャといった動物たちも一緒である。そんなことを考えていると、
いたたまれない気持ちになってくる。そうした点に関しては、かねてから私自身が語って来たことであるが、なんともはや、厳しい世の中が到来したものである。
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ペルーにはエジプトのラクダや馬と同じ運命をたどることになりそうな
リャマやピクーニャ、アルパカがいる。(マチュピチュ遺跡で撮影)
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