実体経済と乖離する株高現象の真相
コロナ禍で観光業やホテル業界などにおいて厳しい経営状況が続く中、株価の上昇は一向に衰える気配が見えない状況が続いており、今月15日には日経平均値は30年半ぶりに3万円の大台を回復している。
新型コロナの発生で昨年3月に1万5000円台に急落した後、わずか半年で2倍になっているのだから驚きである。一銘柄ならいざ知らず日経平均そのものが2倍になるということは尋常ではない。
株価は経済の動きを反映するものというのが常識である。しかし、昨今の株高は実体経済とは完全に乖離(かいり)しており、その度合いは益々増してきている。 昨年12月の就業者数6666万人は1年前と比べて71万人も減少し、減少傾向は9カ月連続して続いており、完全失業率も2・9%と昨年の同月比で0・7%悪化している中での上昇である。
また、昨年、全国で休業・廃業・解散した企業数も前年比で14・6%も増加し5万件近くに達しており、2000年以降最多となっている
実体を見れば、読者にも現在の株式市場の異常さがお分かりになられるはずだ。
それでは、なぜこのような好景気とはとても言えないコロナ禍の状況下で、異常な株高現象が起きているのかというと、幾つかの要因がある。その中で最大の要因となっているのは、コロナによる悪影響は中小・零細企業へ
打撃を与えている一方、現段階ではまだ日経平均に上場している大企業には及んでいないからである。
他にも幾つかの要因があるが、それは5年前から日本銀行が実施して来たマイナス金利政策と先般、政府が支給した国民一人当たり10万円の支援金である。支給金額は家族が4人おれば40万円。現在のゼロ金利状態では預金しておいたところで金利はつかない。そこでこの金で株でも買って増やそうではないか
、と思った人が多かったようである。
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投資家一人当たりの投資額としては少ないが、同じ思いで投資した人の数が想像を超える数に達していたことと、仲間同士がネットを通じてやり取りして投資先を絞ったことから、幾つかの企業の株価が異常な値上がりをし、その結果、他の銘柄もつられて上昇して平均株価の急騰をもたらすところとなったのである。
また、米国におけるダウ平均値が、連日のように史上最高値を更新し続けていることも、もう一つの要因となったようである。実はこの米国株式市場における株価高騰とその後の混乱にも、ツイッターやフェイスブック、ラインなどのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)が大きく関わていたようである。
個人投資家による熱狂的かつ投機的な取引は、SNSで仲間内同士が隠語なども交えて互いに買いをあおり合ってゲーム化を招き、通常の株式投資の枠外に導いてしまったのである。それがいかに異常事態化し
てしまったかは、米財務省や米証券取引委員会が、SNSを通じたやりとりに警報を発していることを見れば明らかである。
この様に我が国だけでなく米国やヨーロッパ市場においても、今の株式市場は経済の実体とは大きく乖離した危険な金融相場と化しているだけに、株価が上がっているから俺も参加してみようと考えて投資することは、避けておいたほうがよさそうである。
一歩間違えば、急騰価格を上回る急落相場に巻き込まれることになるからである。
また、日本だけでなくヨーロッパや米国の中央銀行が株価の下落を止めるために、この5年間で市場に供給した資金は約900兆円という膨大な額に達しているが、もしもこれから先
、株価が更に上昇に転じた場合には、中央銀行が一斉にその資金を引き揚げる可能性が大きいことも、頭に入れておかれたほうがよさそうである。
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