中国による香港の選挙制度改革
香港の中国化を目指す習近平
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「中国政府は香港の制度を好きなように変えてしまっている」
「香港の民意を反映していない、これが一番の問題だ」と語る香港の女性。 |
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5日から開かれていた中国の全国人民代表大会(全人代)が終了した。この会議で注目されたのは、香港の選挙制度の変更であった。読者もご承知の通り香港は1941〜45年まで日本の統治下にあった後、半世紀にわたり英国領となり、1997年に中国に返還されて特別行政区となって今日に至っている。
現在、中国の統治下に置かれた香港政府のトップには中国寄りの林鄭月娥・行政長官が就いている。しかし、特別行政区とは言うものの中国政府の統治力は年々強まり、「一国二制度」は事実上崩壊状態で、市民の声が届かなくなってきていることから、市民からの反政府運動の大規模なデモが発生する事態となっている。
そうした中、今回の全人代において、行政長官を選ぶ選挙委員の人数を1200人から1500人に変更するなど、中国政府の意向を反映しやすい形への変更が決定された。こうしてもはや香港市民は
事実上、習近平政権下に置かれて、これまでの様に自分たちが選挙で選んだ立法会議員によって行政府長官を選ぶという道は閉ざされた形になってしまったのである。
実はこうした中国政府による強権的政策が進められ来ている背景には、
古くから中国に伝わる「階級制度」が存在しているからなのである。そのために、中国人民は古くから「老百姓」(ラオバイシン)と呼ばれる庶民と、その上に立つ「領導」(リンダオ)と呼ばれる政治的指導者に二分され、庶民達は政治に関しては指導者たちの指示に従えばよいのだ、選挙で代表を選んだり言論の自由を求めたり、人権の向上を要求することなど不要である、とされてきているのである。
それゆえに、中国では歴代の指導者が独裁的な権力をもって国を統治することが出来たというわけである。近代史で見るなら毛沢東がその独裁者の一人であったわけであるが、現在の統治者である習近平主席は、自国統治だけでなく世界の覇権国家を目指しているため、毛沢東を凌ぐ権力を持とうとしているというわけである。
彼が中国共産党の創立者である毛沢東をしのぐ勢いで権力を強めていることを示す興味深い場面を映した写真を手にしたのでご覧頂くことにする。多くの方はニュース番組等で目にしても気づかずにいるに違いない。
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年に一度の全人代が始まる際には、巨大な会議場で数百人の議員が立ち上がって拍手する中を主席をはじめとする党の代表者が席に着くのであるが、その様子をニュースで伝える際に必ず映像で映し出されるのは、習近平主席を先頭に代表者が列を作って進んで各自のテーブルに着席する場面である。
ところが、近年その進み方に異変が起きていたのである。というのは、これまでは先頭に習近平主席、2番目に李克強首相、その後には党の最高指導部のメンバーが続くわけであるが、これまでは各自が歩く間隔は皆2m弱の距離を保って進んで着席していた。それがここ2〜3年、主席と首相との距離だけが5m程幅を広くして歩くようになったのだ。
これは「周主席が他の首相や最高指導部のメンバーとは異なる、絶対的な指導者であることを知らしめるための演出」ではないか、とささやかれ出しているのだ。更
に今年の全人代でもう一点驚くべき演出が行われていたのに気づくことになった。収録したビデオを見ている際に気づいて驚いたのだが、NHKの国際報道番組でも同じことを伝えていた
ので、どうやらそれは今年から行われるようになったようである。
昨年までは、周主席たち幹部が着席する席のテーブルには湯呑茶碗が1つづつ置かれていたのだが、今年の全人代では周主席のテーブルにだけ2つの茶碗が置かれいたことであった。
茶器が2つになって
いても、テレビを見る視聴者はそんなことに気づくことはないだろうが、私がそれに気づいたのは、周主席が席に着くなりすぐに茶碗の一つを手に取って
、これ見よがしに飲んでおられる姿のアップした映像を目にした時、彼の席にはもう一つの茶碗が置かれていることに気づいたからであった。
会議がしばらく続いた後に飲まれるなら別だが、席に着くと同時にすぐに口にすること自体が異常で、それは、何百人いる出席者の中で、「私だけは別格だぞ!」
「特別の存在であるぞ!」とその威厳を誇示しているとしか思えない行為であった。こうして習近平主席はいま大国・中国の「領導」(リンダオ
)の頭領となって、他を寄せ付けない絶大な権力を握り、世界の覇権国家を目指そうとしているのだ。
私は大事なニュース番組は毎回ビデオに収録しているので、今回、読者の皆さんに周主席と李克強首相が間隔を置いて歩く姿や、ただ一人2個の茶器が置かれ、着席するとすぐに手に取って飲まれる周主席の姿を、見て頂くことが出来たというわけである。
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今までは全人代において党最高指導部はが入場する際には、周主席の後を李克強
首相以下、皆そろって2m程の等間隔(後ろを歩いている2人の間隔)で歩いていた。
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ところが、ここ2〜3年、
李克強首相は周主席と4〜5m離れて歩くように
なったのだ。首相以下はみな2m間隔。上の写真を見てもらえれば間隔を広げた
為に周主席の後に歩く李克強首相の姿が見えないのがお分かり頂けるであろう。
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これまでは指導部メンバーには全員に一杯の茶が用意さて来た。
ところが今年は、周主席のテーブルには2つの茶器が置かれていたのだ。
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そして周主席は着席するなり、すぐに一杯の茶を飲んでいた。その姿は俺には2杯の茶が
用意されているのだ、「お前たちとは別格であるのだぞ」と誇示しているようであった。
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