米国と中国・ロシアの関係悪化が強まる
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米国のアラスカ州で開かれた米中の外交トップ会談。 |
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最近の世界情勢の中で気になるのは米国と中国との関係悪化である。トランプ大統領が在職中は両国間における際立ったトラブルはなく過ぎてきたが、バイデン大統領の就任以来この2か月間、対話のない状況下でさざ波の立つ関係が続いていた。
このさざ波が一段と高くなったのが、先週、日米と韓米間で行われた外交トップトップによる会談の後に米国のアラスカ州アンカレッジで行われた米国と中国の外交トップの会談であった。
米国の代表は先日の我が国を訪問したブリンケン国務長官とサリバン大統領補佐官。一方、中国は外交面を統括する楊(ヤン・チェーチー)共産党政治局員と王(ワン・イー)外相。しかし、会議では非難合戦に終始し、両者ともにさして得るものなしに暗い雰囲気の中で閉幕するところとなった。
驚いたのは会談の始まりの駆け引きであった。会談の冒頭で両者が2分間づつ所信を述べることになっていたところ、中国の代表がなんと20分にわたって話し続けたため、取材のマスコミは許可された時間を過ぎてしまったため退場し、米国の代表の話が始まる時には取材班はいなくなっていたのだ。こんなことは前代未聞である。
そのため、米国のブリンケン国務長官は外に出た取材班を会議場に呼び戻して、話しをすることになったのだ。この様なことが大国間の首脳会談で行われることはあり得ないことだけに、報道陣も相当戸惑ったようである。私はそうした場面を見ていて、米中間の先行きに強い懸念を感じるところとなったが、それは決して私だけではなかったはずである。
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厳しい会談となった外交トップ会談に出席した面々。
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今回の首脳会議で米国が一番主張しようとしたことは、最近の中国政府が進めている新疆ウイグル自治区、香港、チベット、台湾に対する非人道的な行為に対する批判であった。しかしこれらの点について中国は、ウイグル族に対するジェノサイド(民族を破壊する行為)批判は今世紀最大のウソゴトと反論。更に香港への統制強化に対する批判も、中国に対する内政干渉だ退けていた。
こうして中国は国力の向上に基づく自信を背景に、米国の要求をはねつける姿勢を強めており、両者の対立の構図は一段と強まってより深刻な状況となって来たことを国際社会に示すところとなった。
これから先、習近平主席は「中国による香港の選挙制度改革」に記したように、大国・中国の「領導」(リンダオ
)の頭領となって、他を寄せ付けない毛沢東をしのぐ絶大な権力を握り、世界の覇権国家を目指そうとしているだけに、米中関係は一段と厳しい関係へと進んでいく可能性があり、要注意である。
プーチン大統領を「人殺し」としたバイデン発言
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バイデン大統領の厳しい発言に動じるところのなかったプーチン大統領はさすがである。
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一方、米国とロシアの関係も厳しい状況に向かうことになりそうである。そのきっかけとなったのは、17日に放送された米国のABCテレビのバイデン大統領に対するインタビューで、アナウンサーがロシアの反政権活動家ナバリヌイ氏に対する毒殺未遂事件を念頭に、「プーチン大統領を殺人者(人殺し)と考えるか?」と質問したところ、「そう思う」と答えたことであった。
私もそのインタビューの場面をテレビで見ていて、唖然として質問したアナウンサーと大統領を顔を見つめていた。ロシアの大統領に対して「彼は人殺しか?」と質問したアナウンサーにも驚いたが、首を振るだろうと思っていたバイデン大統領が真面目な顔をして「そう思う」と答えたのには、一瞬、開いた口がふさがらなかった。
まさに信じられない一場面であっただけに、これを聞いたプーチン大統領はいったいどう反応するだろうかと、一瞬、恐怖心が走った。ところがその後のロシアテレビのインタビューに応じた大統領は、笑いながら「私のことを心配するより、バイデン氏はご自身の認知症の治療に力を入れられないと、先行きが心配ですね」と茶化した発言を行っていた。さすがはプーチンである
しかし、ロシア国民から反発の声が上がったことから、ロシア政府は駐米大使を一時召還することとなった。その措置には米側がこれ以上の強固姿勢を取らないよう警告する意味が込められているようであ。
今ロシアはEUとの関係が悪化しており、貿易面などで厳しい状況におかれているため米国との関係悪化は避けようとしているようであるが、今回のような言動が重なった時にはプツリと糸が切れて、習近平主席と手を組んで反撃に出る可能性があるだけに、ロシア政府の今後の動きには注意を払っておく必要がありそうである。
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この二人が手を組んだ時には、世界に激震が走ることになるに違いない。 |
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