サウジアラビア皇太子の
ジャマル・カショギ氏殺害指示明らかに
米国の調査研究機関が公表
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取材を受けるジャーナリストのジャマル・カショギ氏 |
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今から3年前の2018年にサウジアラビアのジャーナリスト・ジャマル・カショギ氏がトルコのイスタンブールにあるサウジアラビア総領事館で殺害された事件については「ジャーナリスト・カショギ氏殺害の疑惑」や「ジャーナリスト・カショギ氏殺害から1年」などでお伝えしてきたので、読者も覚えておられるに違いない。
その殺害に関してはサウジアラビアの事実上の支配者であるムハンマド皇太子の配下にある者が関わっていたことが明らかとなり、事件に関与したとして11人が逮捕・起訴され、内5人に死刑が実行された。一方、ムハンマド皇太子についてはあやふやなまま、早3年が経過してしまった。
今日のABCニュースは米国の情報機関によって新たに作成された事件に関する報告書が発表されたことを伝えていたが、そこには関与した人物の氏名と同時に、この殺害計画がムハンマド皇太子によって承認されたもので、皇太子が事件の黒幕であることがはっきりと明記されていた。
しかし、米国政府としてはムハンマド皇太子に対する制裁を科すことは避けることにしたようである。それはバイデン政権はトランプ政権とは違って、これから先、サウジアラビアに対しては厳しい姿勢で対応していくことにしているが、ここで今後の外交関係を一気に悪化させことは避けようとしたためのようである。
実はこの報告書は今回新たに作成されたものではなく既に存在していたのであるが、トランプ大統領が意図的に握りつぶしていたため、発表されずに今日に至ったようである。
トランプ大統領はサウジアラビアとイスラエルとの関係改善を進めるためにサウジに対しては柔軟な姿勢を取り続けてきたが、バイデン政権は既にサウジがイエメンの内戦に関与することなどを停止させており、サウジアラビアに対しては厳しい態度で臨む姿勢を示している。
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ジャマル・カショギ氏殺害事件の発生した翌年の2019年に行われた
G20大阪サミットに参加したトラン大統領は、殺人者ムハンマド皇太子と
仲良く並んで何事もなかったように笑みをかわしていた。
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私が今回の事件に関する報告書が公表されたニュースを見て感じたことは、政治やそれに関わる人間社会がいかに闇に包まれたもので、人道的な見地から見て、なんともはやおぞましい世界であるかを改めて認識したことであった。
1人のジャーナリストが世界的な大国であるサウジアラビアの事実上のトップに立つ人物の指示で殺害、それもトルコにあるサウジアラビアの総領事館の内部で殺害され、遺体がバラバラに分断されて未だにその場所は特定されていないのだから恐れ入る。
それなのに、殺害を実行した人物には厳しい制裁が科せられる一方、それを命じた人物
は何の咎(とが)も受けずに国家のトップに留まり、国際政治の場で活躍しているのだからひどい話である。
トランプ氏に至ってはそうした事実は百も承知の上で、殺人者を支持し続け大量の武器を売却してイエメンの内戦を悲惨な状況に導いて来ていたのである。それは彼が強く支持するイスラエルとサウジとの友好関係の構築は、彼の政治生命の基盤であったからに他ならない。また、戦闘機や武器弾薬の製造業者からの強い支援を受けるためであったことも想像に難くなく、なんともはやおぞましい話しである。
民間企業の社長が部下を使って敵対者を殺害したら、当然のことながら、殺人者として重大な刑を受けることになるのは明らかである、ところが、一歩政治の世界に入ると、残虐非道な手段で殺害をしたことが明らかになっても、何の罪も問われず、国内政治は勿論のこと国際政治の場でも臆面もなく立ち振る舞いが許されているのだから、恐ろしいことである。
こんな世界がいつまでも続くようなら人類の未来は地獄絵だ。アラブ世界での覇権国家であり、豊富な石油輸出で財政的にも恵まれた大国・サウジアラビアとムハンマド皇太子が、これから先、いかなる道をたどることになるか、しっかり見届けていきたいものである。
地球と人類に残された時間が少なくなってきているだけに、「因果
」に対するこの世での「応報」は、あまり時間をおかずに実施されることになるのではなかろうか。しっかり見守っていくことにしよう。
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