罪深きブラジルのボルソナーロ大統領
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コロナ禍を軽視する政策を行ってきたブラジルのボルソナーロ大統領。
米国に次ぐ30万人の死者を出したことに対して、彼は今もなお何ら反省の姿を見せていないがその罪は大きい。
彼の頭の中には先住民に対する配慮など全くなさそうである。
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今もブラジルは感染拡大が止まらず、医療崩壊の危機に直面している。(AP)
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3月25日現在のコロナの感染者と死者数
感染者数が世界で2番目になったブラジルでは、今1日の感染者数
(黄色)と死者の数(赤色)は、米国を抜いて断トツとなっている。
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コロナ禍が始まって以来、はや1年3カ月。その間、私はほぼ毎日、世界各国の感染者と死者の数のチェックを続けている。今朝も直近の感染者と死者の増加状況をチェックしていたところ、改めて驚いたのがブラジルの数値であった。
米国が今もなお、感染者数と死亡者数において飛び抜けた数値となっていることには変わりはなかったが、インドを抜いて2番手となった南米のブラジルの感染者と死者の数値が、凄い勢いで増え続けていたからである。
直近の1日当たりの感染者数を調べてみると、その数は米国の5万4000人より3万8000人も多い9万3000人、そして死者の数も1
500人程多く2300人超となっていたのだ。その結果、累計数では感染者数は1232万人、死者数は30万人とインドの2倍近くに達していた。14億近い人口を擁するインドを2億1300万人のブラジルが感染者数、死亡者数で追い抜くということは尋常ではない。
表を見ていて思い出したのは、ブラジルで感染者が増加し始めた頃、感染を恐れて外出を控えだした国民に向かって、ボルソナーロ大統領が「コロナ禍など恐れる程のことではない、無用なマスクなど着用せずいつものような暮らしをしていればそれでよいのだ」と語っていたことであった。
実は彼はコロナ禍が始まり出した当初からそう言ってコロナ禍を軽視していたのだ。
1年前、中国のコロナ禍がヨーロッパに飛び火し、イタリアやスペインで感染拡大が始まっていた頃、米国では、トランプ大統領もコロナ菌を「チャイナウイルス」「武漢ウイルス」等と呼んで、「こんなものは恐れるに足りない、マスクなど着用することは無用なことだ」とボルソロナ大統領と同様な発言をしていた。
その結果、米国ではあっという間にイタリアやスペインとは桁違いの感染者が発生し、今や先の世界大戦で亡くなった死者の2倍に当たる56万人の犠牲者を出すところとなっ
ているのである。
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アマゾンの先住民居住区でもコロナ禍が広がり死者が出ている。
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2020年5月にコロナで亡くなった先住民族・コカマ族酋長の葬儀 |
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今ブラジルで起きていることはまさにそうした米国の二の舞である。そんなことを考えている時ふと気になったのはアマゾンで暮らしている先住民たちのことであった。
先日、セサル・ラトーレ氏からお聞きしたところでは、ペルーの先住民部落の人々、その中でも私が学校建設を続けてきたアマゾンやアンデス山中で暮らしている人々の集落では、嬉しいことに感染者も死者も発生していないとのことであった。
一方、ブラジルには日本の13倍の面積を持つ熱帯雨林があり、そこには300の部族があって40万人程が暮らしている。そんなブラジルアマゾンで暮している先住民たちにはコロナ禍は広まっていないだろうかと、気になったので急いで調べて見ることにした。
幸いにもNHKのBS局で放送された番組「アマゾン文明の果て」が
録画してあったので、早速見てみることにした。それによると、ブラジル南西部のボリビアと接した25ヘクタールのアマゾン地区には28の部落があり、そこ
ではスルイ族と呼ばれている1600人程の先住民たちが暮らしているとのことであった。
そして、そのスルイ族の暮らす部族では、私が恐れていたコロナ禍が既に発生していたのである。昨年の秋ごろまでに100人を超す人々が感染し、既に4人が死亡
していたようなので、現在はその数を更に増していそうである。
部落ではパンデミックを恐れて一切の部外者との接触を断っていたのにも関わらず、
なにゆえ感染が広まったのかというと、彼らの集落の周りではアマゾンの木々を伐採しそこで羊などの放牧をするために侵入して来ていた輩(やから)がいたのだが、どうやらそうした外来者によって、感染が広がってしまったようである。
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森林を伐採する人達によって感染が広がったのです、と語るスルイ族のリーダー。 |
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実はアマゾンの中に入って無断で森林を伐採し、焼き払っている人間がいることはブラジル国内では依然から知られていて、問題視されて来ていたのである。しかし、経済発展を重視するボルソナーロ大統領は
、就任当時からアマゾン開発はブラジルのためには必要なことだとして積極的に推し進める一方、許可なくアマゾンに入り森林を伐採し焼き払う行為を大目に見てきていたのである。
そうした彼の「経済重視」と「無秩序なアマゾン開発」に対する姿勢は今も変わらず、コロナ禍の拡大には目をつむり、「ロックダウンの副作用は自殺者を出し、ウイルスよりも大きいな被害をもたらしている」とロックダウンを実施して隔離を進めている州知事や市長を批判し続けているのである。また先日4日には「泣き言は止めろ
、いつまで悲しんでいるつもりだ!」と信じ難い暴言を吐いていた。
そうした経緯を知っていた私は、テレビで先住民族
・スルイ族の集落で、亡くなった感染者の葬儀が行われている悲しい場面を見た時、こうした先住民を含めて30万人を超す国民に死をもたらしたボルソナーロ大統領の罪は大きいぞ、と思わずにはおられなかった。
それは、コロナ禍がイタリアやスペインで始まり出した際に、軽率な判断に基づいて「コロナなど恐れるに足りぬ」と公言し、第2次世界大戦で亡くなった
自国民の2倍に迫る人々に死をもたらしたトランプ大統領の為した言動と一緒であったからである。
そんなトランプ大統領と変わらぬ口調でコロナなど恐れるに足りぬと、マスクの着用などせずに集会に参加して大見えを切っていたのが他ならぬボルソナーロ大統領であった。私は今でも彼の常識を逸脱した言動に対して、驚きと
強い憤(いきどお)りの気持ちを持ち続けている。そんな態度を続けているとブラジル国民に巨大な炎が降りかかることは避けられないからである。
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近年アマゾンでは森林が伐採され続けて来たが、それに関わった人々に
よって、先住民部落にコロナ禍がもたらされるところとなったのだ。
しかし、その違法伐採をボルソナーロ大統領は今も許し続けているのである。
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そんな思いはまさに的中して、今や1日の感染者、死者数は米国を抜いて世界のトップとなって来ている。その実態は上段に掲載した表を見てもらえれば一目瞭然である。
無用に国民を恐怖に陥れることは褒められたことではないが、1年余で30万人を超す死者を発生させていることは重大事である。
それにもかかわらず、ボルソロナ大統領の姿勢は今も全く変わっておらず、累計死者数が26万人を超えた今月の4日に、国民に向かって「泣き言は止めろ、いつまで悲しんでいるつもりだ!」と
声高に語っていたのには驚かされた。
一方、トランプ大統領は自国民にあれだけの感染者と死者を出しておきながら、何ら謝罪することなく大統領職を退いたが、実は彼は在職中の1月にワクチン接種を受けていたのである。ワクチン接種は各自の自由意思で行うものだからとやかく言うことではないが、
未だ国民への接種が始められていない段階で接種を受け、それを内密にしていたことはおかしなことである。
自身がコレラなど恐れるに足らぬと公言してマスクもせずにいて感染し、その後に密かにワクチンを接種していたというのだから驚きである。米国では彼は今もなお高い人気が続いているようで、次期大統領候補だと自画自賛しておられるようであるが、3億3000万人の国民を守る立場に立つのであるならば、もう少し言動には慎重になられたほうがよさそうである。
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スルイ族の暮らす集落
医療施設が全くないこんな奥地の集落でも感染が広がり、
死者が出ているのだ。そうした現実をボルソナーロ大統領は
認識しているのだろうか。彼にとってはどうでも良いことに違いない。
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スルイ族の酋長と村の人々
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こんな可愛らしい子供たちを死に陥れるボルソロナ大統領の
経済優先による先住民軽視の政策は、大きな罪障である。
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