ギリシャの窮状


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深まる生活苦、逃げ道は薬物

 

 
 


高い失業率に不満の声を上げるアテネの学生たち
若者の失業率は2月の時点で62.5%に達している

 

 

なりを潜めているユーロ危機、しかし、その裏でギリシャやスペインなど南欧州各国は緊縮策によって不景気が深刻化し、失業率の高まりと共に様々な社会問題が発生して 来ている。中でも深刻なのがギリシャ。あまりマスコミは取り上げていないが、今ギリシャでは社会基盤の崩壊 につながるような問題が次々と発生している。

先日「ユーロ危機の火種」で記したように、ギリシャでは子供の貧困率が深刻化して来て おり、経済危機が発生する8年前、4%であった子供の貧困率はすでに25%に達して、50万人を上回る子供たちが貧困状態に陥っている。その結果、幼稚園や小学校の生徒の多くが学校に弁当を持ってくることが出来なくなってきており、昼食をとれない状況に 陥っているのだ。

8年前と言えばアテネは、ギリシャオリンピックの檜舞台として世界中から押し寄せた観光客で満ちあふれていた頃である。それが今はパルテノン神殿のあるアテネ中心部の観光地には 、ホームレスや売春婦姿が目立つようになって来ている。そればかりか、そこからわずか車で10分も走った周辺の街は、立ち小便とゴミの臭いが漂う貧民街と化している。

経済危機の後も数年は、時給4ユーロ(520円)を得て縫製工場などで働いていた移民者も、今は時給わずか1ユーロ(130円)の仕事にありつくのがやっと 。そうした状況に喘ぐ人々が街にあふれ出しているわけだが、彼等が目の前の苦しさから逃れるための手段が薬物の利用である。

その主要な薬物が「シーシャ」と呼ばれる粗製の合成薬物である。シーシャとは本来「水タバコ」を意味するアラビア語であるが、今ギリシャでは「シーシャ」は覚醒剤にバッテリー液やエンジンオイルを混ぜて作られた恐ろしい合成薬物の総称として使われている。

この問題のシーシャは既に70種以上が確認されている。そのどれもがヘロインやコカインなどの薬物より刺激が強く、また値段が安いため 多くの貧困者たちが利用するところとなっているのだ。混ぜ物が多い分、体への悪影響が大きく心臓発作や不眠に悩まされるだけでなく、攻撃的になり、意識が混濁した状態で殺傷事件を起こすケースが多くなって来ている。

人口1100万人のギリシャでは今、ケアーを必要としている重度な薬物依存者が3万人に達しており、さらに急増している。しかし、対策のための政府予算は緊縮策によって削られてきており 、十分な対策が打ち出せないまま事態は悪化の一途をたどっている。薬物対策に活躍しているNGOケテアの代表者が語る言葉が胸に突き刺さる。「国民の心理の落ち込みは、第2次世界大戦でナチスドイツに侵略された時期に匹敵している

私は「ユーロ危機の火種」の中で、「貧困のため学校で昼食をとれない子供が多発してきているのは、我が国の終戦直後の混乱期と一緒である」と書いたが、NGOの代表 者はまさにそれと同じことを語っている。今ギリシャは一見平穏そうに見えているが、まさに70年前の第2次世界大戦の混乱期に匹敵する状況に陥っているのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

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