日本国家の破綻がもはや避けられぬ状況にあることはこれまでに何度も記してきた通りであるが、昨日財務省が発表した国の借金総額と財政状況の推移は、我が国のデフォルトの到来がいよいよ目の前に迫って来たことを示している。
借金総額は今年6月末で1008兆円と1千兆円台を突破、その額は国の年間総生産(GDP)のほぼ2倍という他国に類を見ない巨大な数値で、国民一人あたりで見ると、90歳代の老人から産まれたばかりの赤子を含めて皆800万円の借金を抱えたことになる。つまり4人家族なら3200万円の借金を抱えてしまったと言うわけである。もちろん各個人や家庭の住宅ローンや車購入の借金とは別の借金である。
下の図(1)を見れば借金の増加の推移がよく分かる。国の財政収支は70年代半ば頃までは歳出と税収がほぼ均衡がとれていた。しかしそれ以降、歳出も税収も急激な伸びを示す中で、歳出が税収を上回る状況が続き、バブルがはじけた80年代後半からは、歳出がそのままうなぎ登りに伸びる一方で、税収は約60兆円をピークに減少し始めて、財政赤字はその規模を増しながら現在へと続いてきている。
その結果、90年代初め約200兆円だった借金総額はうなぎ登りに増加し続け、ここ20年で一気に1000兆円に達してしまったと言うわけである。今年度の予算総額は92.6兆円で税収は50兆円しか見込めないため、42.6兆円を借金(国債)でまかなうことになっているが、借金には当然利息がつくため利払い等を合わせると、今年度末(2014年3月)には借金総額は1107兆円と更に100兆円増加することになる。
個人に例えるなら、ご主人の年収が500万円あるかないかの家庭で借金の額が1億円を超してしまったことになる。このままでは、生活費と金利の支払い、突然の支出等でどんなに生活を切り詰めても、これから先毎年900万から1000万円が必要だと言うことになるわけだから、毎年、毎年、借金は増え続け、借金の火だるまはその大きさを増すばかりで、誰の目から見ても家庭の破綻は目に見えている。
しかし、多くの国民は「
国家は個人とは違って、そう簡単に破綻することなどないはずだ」と考えている。本当にそうであろうか? 国家であろうが個人であろうが財政なり家計のバランスに限界があることには変わりはなく、ものには全て限界というものがあることを忘れてはならない。
ただ日本という国家が抱えた借金は、他国の借金と比べて借り主が身内の日本国民だという特異点がある。さらには国債などの借金の金利が幸いにも他国に比べて極端に低いという利点もある。因みに、日本の10年もの国債の金利はアベノミクスが始まる前は0.5%以下で、2.7%の米国国債や、4%〜10%というユーロ危機が騒がれている南欧諸国の国債に比べたら桁違いの低さであった。
そのため、我が国のデフォルトなどは想定外の出来事として、語られることのないまま借金は着実に増加し続けてきたというわけである。しかしその裏で、アベノミクスを機に債券市場の目は次第に日本に向けられ、投資家集団の中には日本国債の先物売りを仕掛けて、国債の暴落を虎視眈々と待ち構えている人たちが次第に増えてきているのである。その前兆として、0.5%を割っていた10年もの国債は一時1%台に乗せる動きを見せ始めている。(現在は7.5%)
借金の総額が1000兆円を超え、更に今年度末には1100兆円に向かうとなると、世界の再建市場が日本国債先行きに対して厳しい目を向けることは間違いない。とになると、債権者の90%近くを占める国内の金融機関や年金団体も暴落を恐れて売りに回り、ギリシャやスペイン並みまでは行かないまでも、3〜4%台まで金利が高騰することは十分いあり得ることである。そうなれば1000兆円の利払い額は桁違いに跳ね上がってしまう。利払いの増額分だけで税収の半分がすっ飛んでしまう。
その時期は、アベノミクスの失敗が明らかとなってくるこの秋後半から年末に掛けてではないかと思われる。因みにアベノミクスで発生した円安によって好決算を発表しているトヨタ自動車を始めとする輸出関連の大手企業や、株高で高い利益を出している金融機関などが納める税金の増収で、国家の税収増は約7兆円が見込まれているが、好景気感を起こすために政府がばらまいた資金は10兆円を超しており、借金は減るどころか増えてしまっている。
こうした実体が明らかになりつつある今、世界の投資家は国債暴落による膨大な利益を目指して虎視眈々とその時期を待っており、その一つの口火となるのが8%への消費増税の論議である。増税の実施時期が遅れたり、8%から10%へのさらなる増税の見込みが消えることになるようなら、「財政再建策の放棄」と見なされて一気に日本国債の売りが始まることになるに違いない。
かりに2%や5%の消費増税が実施されることになったとしても、その額は数兆円からせいぜい10兆円前後にしかならない。1000兆を超す巨大な借金の額と40〜50兆円という1年間の税収不足額を考えれば、10兆円に満たない増税額はあまりに小さすぎる。燃えさかる家のsy消火にバケツで水を掛けているようなものでしかない。
こうして見てみると、年金保険料の引き上げや医療費の自己負担増、インフラ整備など公共投資の縮小など国家ぐるみでの血みどろの財政再建策が実施されない限り、
国家破綻は避けて通れないことが分かるはずだ。しかし、命がけでそこまでの英断を下せる政治家は今や日本にはいない。ならば国家破綻は間違いなくやってくる。そしてその時期は目の前に迫っている、と考えておいた方が良さそうである。