前回の「驚きのFRB議長の発言」に記したように、ここに来て再び米国の財政問題が世界から注目を浴び始めてきた。市場が注目している財政事情には下記の2つ問題がある。
@ 新年度予算の成立
A 債務上限問題
政府閉鎖問題
目前に迫った問題点は、@の新年度予算の成立問題である。10月1日から始まる年度の予算が9月末日になっても成立しておらず、未だ議会通過の目処が立っていないのである。先日、議会下院では予算案を可決しているが、下院は医療制度改革に反対する野党・共和党が過半数を占めているため、改革の実施を延期することを条件とした法案として可決されている。
これに対して与党・民主党が過半数を占める上院では、改革の延期条件を前提としない修正案で可決を図ろうとしている。そうした中、昨日の上院議会では医療制度には反対するティーパーティーから支持されている保守派の議員が、夜を徹して演説するという一種の議事妨害で審議が先送りされてしまった。
このままでは、来週の週明けに予算案が通過しないまま10月1日を迎えることになり、政府の一部業務が停止することになりそうである。そうなれば、連邦捜査局(FBI)、教育省、国防総省、米環境保護局(EPA)などの政府機関の一部が閉鎖に追い込まれることになる。
期限直前まで続く、こうした瀬戸際の交渉劇は首都ワシントンではもはやおなじみの光景となっており、米議会の機能不全が鮮明な中で、またまた茶番劇が繰り返されることになりそうであるが、一歩間違ったら大問題に発展する可能性があるだけに、笑って見ているわけにはいかない。
米国では、1970年代、80年代から「政府閉鎖」はたびたび起きており、多くは数日間で終わっている。しかし、クリントン政権時代の95年には、史上最長の21日間の政府閉鎖が起きており、28万人の政府職員が自宅待機となったり、47万人の無給状態が続き、20万件のパスポート申請手続きが滞るなど、一般国民への影響も広がった。
当時はまだ米国経済が堅調で、
実体経済への影響が大きくなかったから救われものの、今は米経済は病み上がりの最中である。もしも、クリントン時代のように政府閉鎖が長引くようなことになれば、
個人消費にも冷や水を浴びせることになり、経済への影響も甚大となる。
債務上限問題
@の問題がクリアーしたとしても、米国はもう一つの問題、債務上限を引き上げるかどうかで、さらなる危機を迎えることになるかもしれない。ルー財務長官はこのままでは連邦政府が抱えた債務の上限が来月17日までに法廷の上限を超える見通しであることを明らかにしているというのに、議会の審議は一向に進んでいないからである。
議会の決定が下されないまま政府の資金が底をついて、もしも米国の国債がデフォルト(債務不履行)になるような事態に至れば、米国だけでなく、世界の金融市場が混乱することになり、株や国債の暴落という最悪の事態
を引き起こす可能性は大である。それは世界が恐れている世界大恐慌につながることになるかもしれない。
国債のデフォルト問題は2011年の8月以来、米国政府の喉に刺さった棘として、抜本的な解決策が先延ばしにされたまま2年以上にわたって続いている。しかし、共和党内の保守派が、上限引き上げの代わりに医療制度改革の廃止を法案に盛り込むよう要求し
続けるようだと、オバマ大統領が共和党との対立を鮮明にしているだけに、意見調整が難航することは必至である。
いずれにしろ、二つの財政問題を巡って来週から10月中旬にかけて与野党の駆け引きは続き、対立の溝が深まることは避けられそうにないだけに、しばらくは米国議会の動向から目が離せない日々が続きそうである。