ユーロ統計局が発表したユーロ圏の失業率は12.1%とユーロ導入以来最悪となった。中でもEUなどの支援を受けて、 財政再建に取り組んでいる国々の
雇用情勢は一段と厳しさを増してきており、ポルトガルは17.5%、スペイン26.7%(3月)、ギリシャ27.1%
(1月)と4人に1人が職の無い状態となって来ている。
中でも心配なのは、ギリシャとスペインにおいて25歳以上の若者の職に就いていない人の比率が50〜60%に達して点である。このままで行くと、夏場以降には10人のうち
6〜7人が職がないことになり、親のすねでもかじらない限り、食事もとれない若者が街にあふれることになってしまう。
これではもはや治安の維持は難しく、観光客の安全は守られる状況ではなくなってくる。それは、観光立国ギリシャがもはや立ち行かなくなること
を意味している。年金カットや公務員の削減が現実化する秋以降、日々、デモと暴動が日常化し治安維持が一段と難しくなってくるに違いない。
子供の貧困化
心配なのは、ギリシャにおける子供の貧困化である。経済危機が発生する8年前、4%であった子供の貧困率はすでに25%に達しており、50万人を上回る子供たちが貧困状態に陥っている。その結果、幼稚園や小学校の生徒の多くが学校に弁当を持ってくることが出来なくなってきており、昼食をとれない状況になっている
のだ。
私が小学校に通っていた60年前、弁当を持参できない開拓移民団の子供たちが昼の食事時になると教室から姿を消し、校庭の隅でサツマイモなどの代食をかじってい
た姿が思い浮かぶ。戦後の不況時ならいざ知らず、つい数年前にはオリンピック開催で好景気に沸いたあのギリシャが、今やそんな状況になっているのだから驚きである。ここまで進んだ子供の貧困化の様子を知ると、経済不況危機
の深刻化の状況が分かろうというものである。
憎まれ子となるドイツ
ギリシャの後を追う国は小国キプロスやスロベニアだけではなさそうだ。失業率が27%とギリシャに近づいているスペインや、86歳を過ぎたナポリター
ノ大統領を再選させざるを得ないほど政局の混迷化が進んでいるイタリアとて同じである。今はまだ大国としての面目を保っているが次第に規模を増してきている両国のデモやストライキを見ていると、秋口から年末にかけて国民の不満が爆発する可能性は大である。
その時の民衆の不満のぶっつけどころは、自国政府や議員だけでなくユーロの優良児であるドイツに向けられそうである。ドイツを目の敵にする国々はギリシャやキプロス、スロベニア、スペインだけに留まらず、イタリアやフランスもその中に入ってくることになりそうだ。
失業率が11%を超してきたフランはここに来て反緊縮へと舵取りを変え始めて来ている。それは即、財政削減策を主張するドイツとの対立を意味している。大国としてのプライドを持つフランスにとって、失業率5%台のドイツは決して心地よい存在ではない。これから先、
EUやユーロ圏での財政問題で「ドイツ対フランス」 「ドイツ対南欧諸国」の争いは、次第にその度合いを増して来そうである。
「国税を支出して各国の危機を救って来たのに、
なにゆえ恨まれねばならないのか!」
そうしたドイツ国民の不満が爆発した時、それがユーロ崩壊の始まりとなりそうである。くすぶり続ける火種に「国民の不満」が加わったら、 火
は一気に燃え上がる。その日、その時はあっと言う間にやってくる。それは1年先、2年先の話ではない。経済の崩壊も自然災害の到来も直線の先ではなく、
加速度を増す放物線上にあることを忘れないことである。