深刻化するロシアの火災
|
|
|
|
モスクワで消火活動に当たる消防士 (ロイター)
|
|
猛暑と乾燥化から発生したロシアの森林・泥炭火災は9日も猛威を振るい、消化した地域もあれば、新たに火の手が上がったエリアもあって、被災エリアは日に日に広がり続けている。テレビに映り出される避難勧告を拒否し、最後まで残っていた人々が家と財産をそのままに立ち去る姿はなんとも痛ましい限りである。
非常事態宣言が出された首都モスクワ市内のスモッグも、日に日に凄さを増してきているようで、大気中の有害物質は許容限度量の6倍近くに達しており、市保険局長は9日の会見で、猛暑や火災のスモッグによる市内の一日あたりの死者数が、通常の360人〜380人から700人に倍増したと発表している。
モスクワ放送は、スモッグの被害を避けて、北の首都サンクトペテルブルクへ逃げ出す人がしだいに多くなってきており、その余波を受けて、サンクトペテルブルクのアパートやミニホテルの部屋代が急騰してきていると、伝えている。海外への脱出も既に始まっているようだが、飛行機便の予約が満杯で、席が取れない状態だという。
欧米ではロシア渡航の警告を出したり自粛を求めたりする国が相次ぎ、モスクワの各国大使館でも家族を帰国させる動きが目立っている。その背景には、スモッグだけでなく核被害への懸念が密かに広がり始めているからである。
|
|
|
|
マスクをかけて物乞いをする人物の横を鼻を押さえて通る通行人
|
|
今回の火災発生で最も恐れられているのが、核施設周辺への延焼である。危険が指摘されていたニジェゴロド州などの核関連施設への延焼は阻止されたようだが、ロシア非常事態省の9日の発表によると、現在、ロシア最大の軍用核研究所とされるウラル地方チェリャビンスク州の連邦原子力センターに火の手が迫り、500人態勢で鎮火に全力を挙げているという。
さらに心配なのが、チェルノブイリ原発のあったブリャンスク州などで発生している火災である。そこには1986年のチェルノブイリ原発事故で汚染された森林が広がっており、今回の森林火災によって、放射性物質が大気中に拡散し、その周辺が再汚染される懸念があるだけに心配である。
日本の学者の中には、被害はあり得ないなどと呑気な意見を述べている学者もいるが、ロシアのショイグ非常事態相自らが5日の記者会見で、放射性物質の拡散が懸念されると述べている。内部被爆の可能性があり、濃度は低くても経年的に影響するため、安易に安全とは云えないことは、放射能被害の歴史を振り返れば明らかである。
アジアの被害
|
|
|
|
松花江の大洪水
|
|
|
|
|
|
甘粛省チベット族自治州の舟曲県の土石流災害の惨状
|
|
先月(7月)末、東北部最大の都市、松花江で大洪水が発生したばかりの中国では、今度は甘粛省チベット族自治州の舟曲県で、豪雨による大規模な土石流が発生、多くの死者と行方不明者が出ており、被災者の数は4万7000人に達している。
降り続く豪雨により発生した土石流によって造られた堰止め湖が崩壊、なんと、舟曲県の3分の2が浸水したというから、被害の大きさが分かろうというものである。
中国政府系メディアの9日午後の時点の報道では、死者は337人と伝えられているが、現地住民によると、県の中心地では8割の建物が崩壊し、すでに少なくとも1000人以上の死体が発見されており、行方不明者の数は9000人に達するようである。
パキスタンのモンスーンによる洪水では、既報のように、1400万人が被災し、雨が続くインダス川南部ではさらに被害が広がっている。また、インド北部では鉄砲水で行方不明者が600人。北朝鮮でも大雨で5500戸が破壊、15千ヘクタールが浸水するなど、アジア各地で記録的な災害が発生している。
|
|
|
|
洪水により床上まで浸水したドイツ東部オストリッツ(Ostritz)にある聖マリエンタール修道院
|
|
欧州・アメリカの被害
そんな中、中央ヨーロッパでも豪雨による洪水が発生。ロイター通信などによると、ポーランドやドイツ、チェコの中欧国境地区を中心に7日から続く豪雨により発生した洪水で、これまでに15人が死亡。もっとも被害が大きいポーランド南西部では今でも断水や停電が続いており、中欧では今後も雨が続くと見られ、多くの住民が避難生活を強いられることになりそうである。
これらの国ではこの時期は夏の良い天気が続くのが普通である。しかし、今年は猛暑と干ばつ、それに豪雨、現地の人には取っては耐え難い夏になりそうである。一方、アメリカでも記録的な猛暑の被害が広がり、アリゾナ州・フェニックスでは、45・5度を記録、4人が死亡、カリフォルニア州では46度を超えて29人が死亡している。
読者は思い出して欲しい!! ヨーロッパ、中国、アメリカの各地が記録的な寒波と大雪に襲われたのが今年の冬であったことを。そして春には、ハイチとチリ、中国の大地震、さらにはアイスランドと中南米の火山噴火。
この夏、北半球を襲っている猛暑、干ばつ、大洪水、それに南半球の異常寒波は、その続きの一コマに過ぎないのだ。残された4ヶ月、世界の気候異変はさらにその度合いを増していくことになるのかもしれない。そんな中、四方を海に囲まれ、異常気象の度合いが低い我が国といえども、いつまでもこのような平穏な状況が続くという保証はない。
小規模噴火が続く桜島が浅間山や富士山の噴火の導火線とならないよう、巨大台風の上陸によって豊作の稲が泥水に浸かり、豊かに実ったリンゴやブドウが地に落ちることのないよう、祈ることにしよう。
百年・千年に一度と言われるほどの大規模な自然災害の中でも、今年に入ってから続く災害は中国にしろロシアにしろ、一歩間違うと政権転覆に結びつく可能性を持つ大規模で異常な災害である。それだけに、これらの災害は国内紛争はもとより、食糧争奪のための国家間紛争へと進む危険性をはらんでいることを忘れないようにして欲しいものだ。
、