景気低迷が民主党を窮地に
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苦境に立つオバマ大統領
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世界の関心事でもある11月2日のアメリカの中間選挙が数日後に迫っている。景気低迷や高い失業率による政権への不満を追い風に「反オバマ」で勢いづく共和党が、4年ぶりに下院の過半数を奪回する公算が大きくなってきている。
その場合、2006年の中間選挙で上下両院の過半数を確保して以来、議会運営を主導したきた民主党は下院で多数を失い、移民政策や地球温暖化対策な
どの重要法案成立が絶望的になり、議会運営が極めて困難な状況に陥ることになりそうである。
さらには、2年後に実施される大統領選におけるオバマ氏の再選戦略にも暗い影を落とすことになることは必至である。一方、ティーパーティーを後ろ盾に、共和党の次期大統領候補に取りざたされているペイリン前アラスカ州知事は
、共和党の議席獲得の功労者として一段と有利な立場を築くことになりそうである。
しかし、オバマからペイリンに代わったからといって、一体どれだけの変化が期待できるというのか、はなはだ疑問である。今回の不況を作ってきたのがブッシュ・共和党政権であったからである。
オバマの再選はない
今年の春のペトル・ホボット氏との対談の際に、オバマ大統領の再選の可能性をお聞きしたところ、彼はその可能性は非常に小さいと語っていた。その理由として経済の低迷が大統領の足を引っ張ることを挙げていたが、今回の中間選挙の様子を見ていると、まさにその通りの流れになってきている
ことが分かる。
今回の選挙で民主党の足を引っ張っている一番の要因は、チェンジを掲げたオバマ大統領が「約束を果たしていないではないか」という点である。また、70兆円近い国家予算のばらまきによって支援された大企業や金融機関は好決算を発表し、何千万、何億のボーナスを手にする人間が再び出ていることも、オバマや民主党候補者に対する
強い反発を招いている。
アメリカの経済が、報道されている以上に厳しい状況であることは、再三にわたって私のHPでも取り上げてきているが、住宅ローンやカード決済で新しい家を手に入れ、借入額を大きくしてきた
「中流階級」の人々の中から、今、多くの人々が家を手放し
、住む居場所を失って「新貧困層」に転落して来ている。
肥満症の大量発生
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米ミシシッピ州ジャクソン通りでピザを食べる男性 (共同 )
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もともと貧困層と中間層の間にいた人々もまた、失業とさらなる所得の減収のため「新貧困層」へ仲間入りする事態となってきている。今、アメリカ社会で問題化しているのが、こうした人々の間に急増している「貧困なのに肥満」という問題である。
食べるものも事欠くような人々がなぜ肥満化してきているのか?
子供から大人まで「とにかく腹を満たすこと」を最優先するため、安価で高カロリーのフライドチキンやフライドポテトを食事代わりにする人々が急増しているからである。
この夏話題になった「1ドル・ハンバーガー」の売り上げによって業績を上げたマクドナルド社のニュースを読むと、今アメリカ人の食生活がいかに非健康食品化してきているかが見えてくる。
ファーストフード食品は単に肥満化だけでなく、糖尿病や高血圧症、それに腎臓や肝臓障害を発生させる。この種の食品には高カロリーだけでなく、内臓に有害な添加物が大量に含まれているからである。
貧困と肥満が全米最悪の南部がこれらの症状の罹患率(りかんりつ)
で、全米で1、2位を争う状況にあることを見れば一目瞭然だ。我が国の若い男女に、人工透析患者や肝臓障害者が急増しているのもそのためである。コンビニで売られている弁当や野菜サラダなど日常的に食べていたら、恐ろしい結果を招くことを知っておいて欲しいものだ。
先進国の中で最悪の貧困率
失業率が最も高いミシシッピ州では、食べるものが何もない状況を定期的に経験する住民は、人口290万人にたいして50万人超、何と20%に達している。また、アメリカ全体でも、4人家族で年間の所得が2万2000ドル(200万円)未満の貧困人口は過去最多の4356万人で、総人口に対する比率はおよそ15%に達している。
2004年度には、貧困率が12.7%で貧困者数が3700万人であったことを考えると、6年間でその数が600万人も増加したことになる。それにしても、100人集まったら、その内の30人が生き延びるのが精一杯の貧困状況下に置かれているというわけであるから、大変なことである。
もしも、これから先アメリカや世界の経済に光明が見えず、一段と落ち込みが激しくなるようだと、こう
した数値はさらに悪化し、貧困層の不満が爆発して暴動化する可能性も出てくるのではないかと危惧される。
最近の中国の対日デモの発生状況を見ていると、反日デモというより反政府デモの色彩が強くなってきている
ことがうかがえるが、それもみな、就職難の学生や失業者の政府に対する不満が蓄積されてきているからではないかと思われる。
そう遠からずの内に、アメリカでも支援団体のシェルターに駆け込んだ人々の中から反政府デモが発生し、世界のマスコミの注目を集める事態
が発生することになるかもしれない。
ただ、我が国もかっての「1億総中間層」的な状況からは大きく後退しており、貧困率も次第に高くなってきていることを考えると、よその国のことを心配している余裕などな
さそうである。