有毒廃棄物流出、非常事態宣言発令
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汚泥が流れ込んだガソリンスタンドの中を歩く男
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読者はテレビでハンガリーの南西部で発生した有毒の汚泥(おでい)の流出による惨状をご覧になられたことと思う。この汚泥はアルミニウムの精製工場の廃棄物貯蔵施設にためられていたものが、人為的ミスが原因と思われる事故で流出したもので、一つの町が高さ2メートルを超す真っ赤に染まった汚泥に覆われ、まるで大洪水に襲われたような状況を呈している。
下記ブログからその惨状を見ることが出来るので、ニュースを見過ごした方はご覧頂きたい。
http://www.tv-asahi.co.jp/ann/news/web/html/201005040.html
被災地周辺の人々はこれからの除去作業が大変である。汚泥が単なる汚れた泥なら放水して流せば済むことだが、この泥状の水にはカリウムや鉛、コバルトといった重金属類などの毒性の強い化学物質が大量に含まれているだけに、ことはそう簡単にはいきそうもない。
ましてや、流出量はオリンピックのスイミングプール400個分に達しており、汚泥に覆われたエリアは26キロメートル平方に広がっているようなので、被災地一帯から汚泥を除去する作業はなおさら大変である。
被災地の映像を見ていると、2年前のクリスマス、アメリカのペネシー州で起きた同様の化学物質流出事故の惨事を思い起こさせる。残念ながら、人間は一つの事故からの教訓をなかなか生かせないようである。
生態系の大惨事へ発展の可能性
心配なのは、被災者は言うまでもないことだが、放水により除去された汚泥が流れ込むことになる周辺の河川に棲む小動物や魚介類への被害である。
靴や衣服に付くと発火するばかりか、体内に入ると命に関わるほどの毒性を持っていることを考えると、我が身、我が家周辺がきれいになればと、何の対策も立てずに除去作業を進められたら、河川やその周辺の生態系に一大惨事を引き起こす可能性が大きいだけに心配である。
想像を絶する勢いで進んでいる生物の絶滅を防ごうと、生物多様性条約推進のための国際会議が間もなく名古屋で開催されようとしているが、一方で、我々人類は愚かにもこういった人為的な事故で多くの生物を殺傷しているのである。
新聞の記事を読んでも、死者が4人とか負傷者が200人に達したといった記事は目につくが、生態系への影響を心配した記事にほとんどお目にかかれないのは悲しいことで、マスコミの品位を疑いたくなってくる。
豊かさと利便性を求めるがゆえに自然環境を破壊し、共生していかなければならないはずの生物や植物をこうして殺傷し続けてきているのが、我々人類の現在の姿である。今回のハンガリーの事故の汚泥の何百倍もの毒性物質を、日常的にばらまきながら急激な経済発展を続けているのが、現在の中国であり、インドである。
かの国の指導者たちには、こうした事故から我が身を振り返って欲しいものであるが、残念ながら今の両国の経済発展一辺倒の様子を見ていると、無理の相談のようである。