新米の等級が急低下
ここにきて、今年の新米の等級の低水準化が問題になってきている。
米の等級というのは、農産物検査法に基づいて民間の検査機関が地域ごとに玄米の品質を検査して、等級をつけるものである。水分の量や形、色など一定の基準を満たし、十分に成熟した粒がどのくらいの比率であるかによって1等米、2等米、3等米、規格外と分けるのである。
刈り取ったばかりの米を詰めた紙袋が、農家の作業上に積み重なる。中身は最高級米「魚沼産コシヒカリ」、生産者としては楽しみの出荷の時期であるが、今年は違う。その多くの品質が過去最低のレベルにまで落ち込み、なんと、1等米の比率が「17%」まで低下してしまっているからである。
埼玉県では、昨年は1等米が97%だった主要品種の「採のかがやき」に粒が割れるなどの被害が出て、94%近くが主食用にならない規格外となっている。
こうした品質の低下は、農林水産省が20日に発表した数値によると、新潟県や埼玉県に限ったことではなく栃木、福島など全国的にもひどい状況で、1等米の全国平均比率は64.4%と過去12年間で最低の水準となったようである。1等米と2等米の価格差は60キロあたり1000円程、
さらに規格外となったらただ同然であることを考えると、農家の方にとっては大変な打撃であることは間違いない。
「これでは今年は出稼ぎに出なければなるまい」と言う農家の方の話を聞くと胸が痛む。早朝から頑張った1年間の成果がこれであるからだ。マスコミはこうした農家の窮状を取り上げる一方で、消費者には大きな影響は及ばないようだと呑気なことを伝えているが、問題は、これだけの品質低下をもたらした異常気象が
、今年限りのものではないという
点である。
私が住む標高1000mほどの八ヶ岳高原
、幸いこの辺りで生産された米にはあまり品質の影響が出ていないようであるが、その一つの要因として、昼と夜の田んぼの水に温度差があった
ことが挙げられている。新潟や埼玉では夜間になっても温度が下がらない日が続いたため、稲作にとって必要な昼夜の温度差が得られなかったのである。
困ったことに、標高の高い高原地帯の農地はわずかである。肝心な新潟や埼玉などの主要稲作地が影響を受け、今年のような状況がこれから先も発生するようだと、大型農家が立ち行かなくなってくる。また、今年は品質の低下で終わっているのでまだなんとか救われるが、来年以降、収穫量に大きな影響が出て
くるようだと、なおさら大変である。
備えあれば憂いなし
こうした状況が続けば廃業農家が増え、国は輸入米に頼ることになってくる。日本がかろうじて自給しているお米までが輸入に頼るような事態になったら、死活問題である。奄美地方に豪雨をもたらした今回の台風13号がフィリピンやベトナムで米作に大被害を与えていることをご存じだろうか。
台風や洪水によって、今年の東南アジアや中国の米の収穫量が大きく減収している。気がついてみたら輸出国自身の米がなくなっているかもしれない。現に、小麦の主要な輸出国であるロシアが酷暑による減収で、輸出をストップしていることはかねて報告した通りである。
こうした事態はこれまでにもあったことなので、心配はいらないと考える向きもあるかもしれないが、昨今の異常気象は1年や2年で終わるような代物ではなく、
その規模もますます大きくなる可能性が高いだけに、そんな甘い考えは通用しなくなるのではなかろうか。
備蓄の必要性については、講演会やHPで何度も取り上げてきたが、各自が真剣に考えないと、いつか「臍(ほぞ)をかむ」ことになるに違いない。今は確かに米があまった状況で国の備蓄も十分にできているかもしれないが、いったん不作や凶作となったら、倉庫から米俵はあっという間に姿を消してしまう。その時では遅いのである。