日銀のゼロ金利政策の行方

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喜ぶのは世界のファンド

 


 
 


5日の会合後の記者会見に臨む白川方明日銀総裁

 

 

すでにご承知の通り、日銀が5日、金融政策決定会合で政策金利を現行の年0.1%程度から0〜0.1%程度に引き下げる追加の金融緩和策を決めた。事実上のゼロ金利政策である。

今回の日銀のパッケージ化された「法的緩和」と名づけられた政策の特徴は、潤沢に資金を供給するための「量的緩和」と、多様な金融資産を買い入れる「信用緩和」の両方の側面を取り入れたものであることである。

金利を事実上ゼロにし、なおかつ銀行などが抱えるファンドなどを買い入れるという、中央銀行として景気回復策の最後の手ともいえる異例の措置であるが、私は、これで現在の日本の景気がどうなるものでもないと考えている。

今や日本の経済状況は0.1%の金利のどうこうの状況ではなく、また、ゼロ金利にもっていったところで、アメリカのドル安政策を食い止めることなど無理な相談である。現に、円高は再びじわじわと上がってきている。それに、金融機関から金融資産を買い上げたところで、今の都市銀行や地方銀行の置かれた経営状況を考えると、ピンチに立っている中小 企業に資金が回ることなどほとんど期待薄である。

喜ぶのは、再び0%となった資金を借りて、諸々の投資に当てる外国ファンドぐらいである。彼らはただ同然の資金を借りて、どこにその資金をもっていくのか? インドや中国などの途上国の株式市場である。最近のインドや中国の異常な株高を見ればすぐに分かることだ。

インドの代表的な株価指数「SENSEX(センセクス)」はリーマンショックで8100ポイント近くまで下落したのに、今再び急上昇を続け史上最高値20,000ポイントに迫っている。

インドの投資家自身は企業の利益に比べて株価が割高の水準にあり過ぎるため、皆逃げ売りを始めているがそれでも上がり続けているのは、外国人投資家、つまり、日本などのゼロ金利国から調達した資金を使った世界的なファンドが投機的資金を投入しているからに他ならない。中国株についても同じ事が言える。

ファンドの今一つの金の使い先は、異常気象により価格が上がり始めている穀物市場への投資である。これからは、ロシアの小麦や大麦の輸出禁止に見られるように、各国とも生産の落ち込みにより食糧価格が次第に上昇してくる。その上に、世界的な規模のファンドマネーがその値上がりを狙って買い上げてくるわけであるから、このスパイラル現象によって、さらなる価格上昇につながる可能性が高くなってくる。

 

 
 


アメリカの株式市場も異常な動きを始めだした

 


心配なのは、今回の日銀の異例の措置が、物価上昇が約1%に達するまで継続させると明記している点である。現在の物価上昇率はマイナス1%前後であるから、このデフレの中で2%上昇するまで、政策を維持すると明言しているわけであるから、投資ファンドは安定したゼロ金利資金として借りまくって来ることは間違いない。

現に、アメリカをはじめ世界中の株式市場が低迷する経済情勢とは裏腹に、異常な上昇を始め出している。ニューヨークダウは節目の11,000ドルを超え、さらなる高値に向かって進もうとしている。身の回りに失業者が増え続けているというのに、株価だけは上がり続ける。

それは日本もアメリカも、ヨーロッパ諸国も皆同じである。なんとも恐ろしい話だが、もはや世界の株式市場は各国政府の管理相場、博打相場となっており、まともな市場ではなくなってしまっている。

この異常な動きがどこまで続くか確かなことは分からないが、いつまでもということはあり得ない。老婆心で申し上げるなら、出来るだけこの異常な世界から離れて、高い視野から注意深く見守っておくべきである。

 

 


 

 

 

 

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