軍産複合体の犠牲者となった兵士たち
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米国各地で見かけるホームレスの中には、中東諸国から帰国した
5万人を越す退役軍人が含まれており、今米国を揺るがす社会問題となっている
(写真はNHK・BS「キャッチ!インサイト」より転載)
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米国が行ってきた湾岸戦争やアフガン、パキスタン、イラク戦争がいかに理不尽で無慈悲な戦争であったか、またそればかりか、今世界を揺るがしているイスラム国やアルカイダ、ボコハラムなどの狂気のイスラム系武装勢力の誕生に大きな要因となったかについては、これまで何度か記してきた通りである。
米軍による中東各国に対する戦争を機に、中東諸国の多くの若者が世の中に不正感を感じるようになった結果が、テロの発生であったからだ。
13年間に渡る中東各地での戦争やその後の治安維持が一応終了し、イラク、アフガンに続いて昨年末にはパキスタンから米国軍の大部分がその任務を終え撤退した。
しかし、命を投げ出し厳しい任務を終え帰国した彼らを待ち受けていたのは、誇りや喜びとは正反対のなんとも悲しい現実であった。
昨日行われたオバマ大統領の一般教書演説では、過去10年間の雇用改善と景気回復が強調され、浮かれたムードが漂っているように見えるが、その裏で今
、米国では多くの退役軍人がホームレスとなって暮らしていることが大きな社会問題となっていることを、読者はご存じだろうか。
その数はおよそ5万人、彼らの多くがストレス障害や鬱病、さらには、アルコールや麻薬などの依存症に陥っているのだ。 国のために命を投げ出して任務を遂行してきた彼らの多くが、帰国後は国から見放され、社会から見捨てられている
というのだからなんとも悲惨だ。
アルカイダやタリバンの攻撃に身をさらして戦って来たというのに、なにゆえ帰国した退役軍人の多くがこうした悲惨な状況に追い込まれなければ
ならないのか? その要因を探してみると、家族や友人との間に出きた
「心の溝」やそれが要因となった「離婚」、さらには退役後の「就職の難しさ」が挙げられるようだ。
日本の自衛隊員とは違って、戦地から帰国したら米軍兵士の多くは民間人であるため、一般社会に戻らなければならない。しかし、彼らの社会復帰には大きな障害が待ち受けていたのである。
何よりも帰還兵たちの社会生活への復帰を妨げたのは、以下の2点である。
@ 大義名分のない戦争への出兵
A 帰国した後に目にした日常生活と戦地での戦闘行為との間の大きなギャップ
つまり、2つの要因が多くの帰還兵たちが帰国後に日常生活を送る中で、戦地に赴いて命を投げ出してきたことの意味を理解出来なくさせてしまったのである。
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待ちに待った帰国を果たした兵士達。
彼らの多くを待ち受けていたものは!
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この兵士の喜びの気持ちも、一時で終わってしまったのだろうか?
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我が国でも先の太平洋戦争で敗戦後に戦地から多くの兵士が無念の思いで帰国している。しかし、彼らの中からストレス障害や鬱病、アルコール依存症が多発したなどと言うことは聞いたことがない。彼らには
国を守るという目的意識と自覚心があり、帰国後、人々が暖かく迎え、労をねぎらってくれたからである。
一方、米国の軍人たちの場合は命がけの任務を遂行して帰国してみれば、世の中は株価が値上がり続ける中、
富裕層たちの浮かれた気分の生活が続いている。多くの同僚たちの死を目にしてきた彼らには、そんな偽りの社会の中に、自分たちが為してきた任務の意味を見出すことが出来なかったのだ。
そもそも、全ての戦争は「闇の勢力」やその手先となっている「軍産複合体」の利益のために引き起こされたもの、その犠牲者となるのはいつものことながら、彼らの配下である軍人と一般民間人。
12年前、大量破壊兵器の消滅を大義名分に始まったイラク戦争も、戦地に赴いた兵士達がそこで目にしたのは大量破壊兵器などではなく、戦争で住む家を失った人々の悲惨な姿であった。
こうした体験を積んだ兵士達が帰国後、「まやかしの世界」の中に溶け込んで社会復帰を成し遂げられず、アルコールや麻薬の乱用に陥り、ストレス障害や鬱病となり、ホームレスになるのは至極当然のことである。
米国全体では民間慈善団体の努力でここ数年、精神障害者やホームレスの人数は徐々に減少してきているようであるが、大半の州では今でもなおその数は増加し続けており、この4年間でネバダ州では44%、ミシシッピ州では33%、ニューメキシコ州では30%増となっている。
このままでは、米国は戦争行為そのものでは勝利したものの、任務を終えて帰国した軍人たちを貧困や病から守るという、「もう一つの戦い」
では敗者ということになりそうである。
中東各地でカルマを積んだだけでなく、自国においてもさらなるカルマを積み重ねようとしてる国が、
いつまでも繁栄を続けることなど出来るはずがない。 これから先に待ち受けている地獄絵図が目にちらつくようだ。
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ネバダ州やミシシッピ州、ニューメキシコ州などでは今もなお
退役軍人のホームレスは30%を越す勢いで増加し続けている
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