欧米を中心に格差や宗教的差別を理由にシリアやイラクなどに違法出国しイスラム国などの過激派組織に加わる人々が増加している。そうした傾向は隣国中国においても同様であるるようだ。中国における不法出国者の多くはウイグル族で、彼らは中国政府の少数民族政策に反発している人々である。
中国政府が心配しているのは、こうした不法出国者たちが国際的な過激派組織と結びつき、中国国内の反政府勢力と連携し、新疆ウィグル自治区などで大規模なテロ活動を展開することである。もしも、こうした事態が発生するようなことになれば、チベット自治区や広西チワン族自治区など非漢民族のエリアに飛び火することは間違いなく、共産党政権の崩壊にも発展する可能性がある。
トルコは歴史的にも民族的にもウイグル族との関係が深いせいか、トルコを経由してシリアに渡るケースが多いようだ。また広西チワン族の組織は不法出国者を車でベトナム国境に送り込んでおり、既に昨年1〜4月の3ヶ月だけで3000人以上を出国させている。
問題はこうした出国者の動向である。
「イスラム国」幹部は昨年7月に
、ウイグル族などのイスラム教徒の権利を抑圧しているとして、中国を名指しする声明を出しているだけに、我が国に対する今回の人質を盾にした身代金要求などとは違って、訓練された戦闘員を中国本土に送り込み共産党政権に揺さぶりをかける可能性が大きい。
このまま「イスラム国」の攻勢が続くようなら、遠からずして隣国中国で、イスラム系テロのニュースを目にすることになるかもしれない。
中国の国家統計局は20日、2014年の中国の経済成長率(GDP)が前年より0・3%低下し7・4%となり目標値を下回ることになったと発表。成長率が目標値に届かないのはアジア通貨危機に見舞われた1998年以来16年ぶり
のことである。
かねてから中国政府が発表するGDPの数値には、6%の上乗せがあると言われているだけに、実質的な成長率は1%台と見ておいた方が良さそうである。少なくとも
ここ数年、中国経済が大きく減速してきていることは間違いなく、おそらく2015年中には、目に見える形でその実態が表面化することになりそうである。
それを裏付けるように、11月に中国人民銀行が行った予想外の利下げにも関わらず、12月の新規銀行融資額は市場予想を大きく下回った。銀行が企業の悪しき実体を熟知していて融資に慎重になっているためである。その結果、資金を必要とする多くの企業は、「シャドウバンキング(影の銀行)」から借り入れざるをえなくなっているのである。
この点が大きな問題だ。
「シャドウバンキング」は10%を越す金利を餌に投資者から資金を集めているため、そうした資金の融資を受ける企業の負担は大きくなり続
ける一方で、もしもこのまま不動産販売の停滞や経済の減速傾向が続くようなら、遅かれ早かれ
企業倒産が相次ぐことになるのは必至である。
それは即、「シャドウバンキング」そのものの連鎖的倒産劇(デフォルト)を引き起こすことになる。それこそが私がかねてから心配し、「中国経済破綻の狼煙」や
「危うくなって来た中国」、「中国の景気減速懸念強まる」などで、その危険性について何度も指摘してきたことである。
その「シャドウバンキング」については、昨年末から今年にかけ河南省や河北省、四川省などで債務不履行(デフォルト)が相次ぎ、政府の管理・監督責任を求める抗議が各地で発生している。「シャドウバンキング」の融資残高は、中国政府のシンクタン
クである社会科学院金融研究所の報告によると、27兆人民元(約510兆円)に達しているだけに、一旦、本格的な火の手が上がった時には、中国経済が地獄と化すことは不可避である。
世界は今、習近平率いる共産党政権がどこまでその危機を引き延ばすことが出来るか、息を殺して見守っているところである。