ウクライナ停戦合意「たんなる紙切れ」に
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停戦協議で決められた重火器の撤収はまったく進んでいない
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厳寒の中、家を焼かれた人々の苦しみは増すばかりである (ドイツZDF)
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世界情勢は日に日に激化して、悲しみや苦しみを伝えるニュースばかりが流れ、こうして記事を書くこと自体が段々つらくなってくる。一つはウクライナ情勢、二つ目はイスラム国によるエジプト人殺害、三つ目はギリシャ問題である。
先日、ベラルーシーの首都ミンスクで行われたウクライナ、フランス、ドイツ、ロシアの首脳たちによる16時間にも及ぶ4者会談で、なんとか停戦合意にこぎつけたばかりのウクライナ問題。
しかし、たった1日を置いた16日には、早くもウクライナ軍と親ロシア軍との間で停戦協定が破られ、砲撃戦が始まったニュースが伝えられている。
政府軍と親ロシア軍の間には、50キロの緩衝地帯が設けられ、16日中には重火器を撤去することが約束されていたが、この様子ではとても実行は無理のようだ。
ドイツのテレビ局ZDFは停戦合意はたった2日間で、「たんなる紙切れ」になりつつあると伝えている。
絶望感に襲われているのは戦場と化した街に住む住民達である。雪降る寒さの中、年金の支給も得られなくなった人達は電気もつかない地下室に入り、粗末な食事をとりながら、予告なしに飛んでくる砲弾におびえて一日一日を暮らしている。一方、街を逃れた人々もまた見知らぬ地で困窮生活を送っている点では、苦しみと悲しみの心は一緒である。
リビアでコプト人21人が殺害
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21人の出稼ぎの男性を失った小さな村の通りには
悲しみの泣き声が響き渡っていた (イギリスBBC)
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この写真を見れば、コプト人たちの生活が決して恵まれていないことが分かる
だからこそ、村の男たちは危険を承知で、内戦状態が続くリビアに出稼ぎに行くのだ
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一方、リビアではエジプト人21人がイスラム国によって殺害され、エジプト軍が報復措置としてリビアのイスラム国施設に空爆を始めている。殺されたエジプト人はキリスト教一派のコプト教徒である。彼らはエジプトの地で長い間冷遇されてきた少数民族で、今もなお厳しい経済環境の中で暮らしている。
彼らが内戦状態が続く危険なリビアに出稼ぎに行っているのは、エジプトにはまともな働き場がないからである。殺された21人の中には家族5人が含まれている家庭もあり、テレビには悲報に接し泣き崩れる女性の姿が映されていた。
隣で涙を流す男性は
「それでも我々はリビアに向かうしかない。自分も明日にはリビアに向かうつもりだ。家族を養うにはそれしか手がないからだ!」と語っていた。こうしたなんとも悲惨な状況を聞かされるたびに、むなしさと絶望感に襲われる。
再び混乱に向かうギリシャ
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神殿の丘の下、アテネの広場は緊縮反対を唱える群衆で埋まった (スペインTVE)
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厳しい状況に向かっているのは戦場だけではない。政府の財政削減策のために解雇され、その日暮らしを送っているギリシャの人々も未来に希望が持てないという意味では、また同様である。失業率が25%を越し、若者に至っては2人に1人は職がない状況が今もなお続いているギリシャ。
公務員の大量解雇、最低賃金の引き下げ、年金削減などが始まって既に数年、蓄えのない市民には厳しい日々が続いており、住む家を失った路上生活者の数は増すばかりである。
EUや欧州中央銀行、IMFなどから2400億ユーロ(32兆円)の支援を受け、ギリシャ政府の財政はなんとか持ちこたえているが、支援の条件となっている財政削減のため、市民の暮らしは日に日に厳しくなる一方である。
「国民が追った傷を癒し、苦しみから解放する」をスローガンに掲げたチプラス首相が登場。政策実現に向かって動き出したものの、15日に開かれたユーロ圏財務相会議では、EUの各国財務相からチプラス首相が掲げる緊縮策の見直しに理解が得られず、物別れとなった。
20日に今一度財務相会議が予定されているようだが、そこでも合意が得られなければ、政府内に不協和音が高まり、再び議会の解散選挙となるか、EUに対する緊縮策の見直しを要求し続けるかどうかを問う国民投票が行われるか、いずれかとなりそうである。
いずれにしろ、緊縮策見直しを表看板に登場したチプラス政権であるだけに、EUの要求する財政削減を受け入れることはあり得ない。それゆえ、ドイツをはじめとするEU各国が大幅な妥協をしない限り、ギリシャが再び混乱に陥る事態は避けられそうもなさそうである。
そうなれば、欧州全体が混乱状態へと向かうことになる。イスラム国によるテロが続く中、欧州各国はさらなる難しい判断を迫られそうである。いずれにしろ、泣きを見るのは一般市民。これから先、なんともやりきれない日々が続きそうである。こうして世界を見てみると、日本はまだまだ救われている。贅沢を言ったら罰が当たりそうである。
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