待ち受けているのは「いばらの道」
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高らかに勝利宣言をする急進左派連合の党首ツィプラス
勝利の喜びの先にはいばらの道が待っているようだ(ロイター)
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世界が注目していたギリシャの議会選挙、どうやら野党の急進左派連合が大勝利となったようである。第1党となることは事前に予想されていたが、単独に近い形での政権奪取は予想されていなかっただけに、
ギリシャだけでなくユーロ諸国や世界に与える衝撃は大きそうだ。
急進左派連合のツィプラス党首は選挙期間中「我々はこれまで傷つき屈辱を受け続けてきた。ヨーロッパから強制されてきた緊縮策はすぐに終わる」と述べてきた。 したがって、これから政権を担う急進左派連合が国民との約束を守るため
には、EUと厳しい交渉をしていくことになるのは必至である。
4年前、財政危機に陥ったギリシャは財政の立て直しのためにEUからの巨額の資金援助を受けて来たわけだが、その見返りとして財政削減の実行を求められ、厳しい緊縮策を続けてきた。そのために国民は、@ 年金の最大50%カット、A 公務員の1万5000人削減、B 消費税19%から23%への引き上げなどの厳しい政策を強いられてきたわけである。
その結果、景気の低迷はますますひどくなる一方で、多くの中流家庭が貧困層に転落し、何万もの中小零細企業が倒産するところとなった。失業率は25%を超し、若者は2人に1人が職に就けない状況が続き、観光地アテネの有名な商店街はシャッター通りと化
して、街にはホームレスが溢れる状況となっている。
こうした状況下、国民の不満、中でも低所得者の憤懣は想像以上に大きくなっていたようだ。それは、今回の選挙で今まで注目されることのなかった左派勢力が、議席の過半数
を獲得する程の大勝利となったことや、150年余のギリシャ議会史上で最も若い40才の首相が誕生する事態を見れば明らかである。
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急進左派連合の大勝利にわく支持者達。
これまでの厳しい生活からの脱出を願っている人々にとっては
バラ色に思える未来だが、現実はいばらの道が待っているようだ。
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ツィプラス党首はこれから先、選挙公約を実行するための資金をどこから調達することになるのか? 「天から小判」と言うことはあり得ないので、EUに対して借入金のカットや財政削減の大幅見直しなどの要求を突きつけることになるのは間違いない。
しかし、ドイツを始めユーロ各国はこれまでに、ギリシャ救済に自国民の多額の税金をつぎ込んできているだけに、ギリシャの要求を易々と受け入れるわけにはいかない。折りしも今ギリシャは、EUから金融支援を受け続けるための審査を受けている最中である。来月末までに話し合いがまとまらなければ、支援の一部が凍結・中断する可能性が高いため、EUと早急に交渉をまとめなければならない。
急進左派連合が国民に約束したバラ色の約束を守るためには、どうやら、いばらの道が待ち受けていることだけは間違いないようだ。
問題は新ギリシャ政府とEUとの交渉で、もしもEUが何らかの妥協をした際には、他国がこれをまねしようとするドミノ効果が発生することである。ギリシャが節約をしないで済めば、他の財政危機国スペインやポルトガル、イタリアなども国民に不平不満をもたらしている財政削減策を進めなくて済むからである。
かといって、EU側が厳しい態度に出ればギリシャのユーロ圏離脱は避けられなくなってくる。
もしもそうした事態になったら、世界の政治や経済が大混乱状態に陥ることは必至である。いずれにしろ、しばらくは「ギリシャ対EU」の交渉状況から、目を話せない
日々が続きそうである。
ここ数日戦死者が急増し緊迫度を増してきているウクライナ情勢や、イスラム国やアルカイダに対するテロ対策と共に、ヨーロッパはこれから先、一段と厳しい状況に向か
うことになりそうである。
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ギリシャのみならずヨーロッパが今遭遇している状況は、
これから先、一段と厳しさを増して行くことになりそうである。
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