習近平政権になって以来、中国の領海拡張の野心はますます強くなってきているようだ。最近公表された人工衛星画像を見ると、南シナ海の係争水域
となっている南沙諸島で人工島の建設が急拡大して
来ていることがうかがえる。フィリピンのABSテレビは南沙諸島海域に浮かぶ岩礁が、中国によって次々と人口島と化して来ており、その勢いはまるで雨後の竹の子のようだと伝えている。
その一つが
ヒューズ・リーフ(東門礁)と呼ばれている珊瑚礁海域を埋め立てて出来た、面積が7万5000平方メートルとサッカー場約14面に相当する人工島で、そこには二つの埠頭(ふとう)とセメント工場、それにヘリコプターの発着場などが作られている(上の写真参照)。
また長さ2700メートルの「ガベン・リーフ島(南薫礁)」には長い滑走路と司令塔が備えられている。
これらの島が作られている南沙諸島は中国からは1056キロキロメートル離れているが、フィリピンやマレーシア、ブルネイなどからはその3分の1の距離しかない(下の地図参照)。
しかし、そこを中国は自国の領海域だと主張しているのだ。
中国政府の主張する南シナ海の多くの領域は、マレーシア、ベトナム、ブルネイ、台湾、フィリピンなどの主張する領域と重なっており、
領海をめぐるトラブルは今も続いているだけに、今、中国が進めている人口島建設は東南アジア諸国との新たな紛争の種となることは間違いなさそうだ。
問題となっている人口島の工事が始まったのが、習近平国家主席が権力を掌握した2012年以降であることを考えると、周主席が新たな島々を軍事的要塞として、海と空から近隣諸国を威圧し南シナ海を支配しようとしていることは明らかだ。彼には近隣諸国からの抗議やASEANとの間で結ばれた、南シナ海における挑発行動を避けるとする誓約など、まったく守る意思がないようである。
領土を広げようと、チベットを侵略しダライラマを追い出した中国は今、海上へと目を向けている。尖閣諸島への軍と民間とが一体となった威嚇行動を見れば、かの国の強欲さの程が分かる。「欲望の達成=幸せ」と考える人が多いがそれは大きな間違いだ。欲はさらなる欲を産み、欲には際限がないのだ。
領土拡張という欲望の行き着く先は、世界を自分のものにしようとするところとなる。人類の歴史がそれを示している。南シナ海は世界で最も船舶の航行が多い海域の一つであるだけに、中国が日本を始め
東南アジア各国との間にまいた紛争の種が火を噴いた時が心配だ。