世界のマスコミは、フランスのバリで発生した「シャルリー・エブド襲撃事件」と「食料品店での殺傷事件」を事件発生から1週間が経過した今もなお、連日トップで取り上げ続けている。異常なまでの取り上げ方である。
今回の連続襲撃事件は、フランス中を恐怖と憎しみに巻き込み、パリやリヨン、ボルドーなどで行われた追悼集会や抗議デモには、フランスのデモ史上最多の370万人が参加。
パリの抗議デモには、ドイツのメルケル首相や英国のキャメロン首相など50ヶ国の首脳が参加している。
どうやら二つの襲撃事件は、イスラム国やアルカイダ系のイスラム過激派に洗脳された人物が仕組んだ事件のようであるが、彼らが狙った相手は一つではないことに注目しておく必要がある。「シャルリー・エブド襲撃事件」は反イスラム主義に対する報復事件であるが、「食料品店での殺傷事件」は現場となった食料品店がユダヤ人向けの商店であったことからも分かるように、反ユダヤ主義的な事件である。
日本人の目からすると、ややもすると二つの事件は同一視されかねないが、反イスラム教的なフランス人に対する反発と、パレスティナを敵視するイスラエル人に対する反発の2つの意味を持っていることに、注意しておく必要がある。
フランスに住むイスラム系人による反ユダヤ主義的な動きはここ数年次第に激しくなって来ており、2012年3月には仏・トゥールーズのユダヤ人学校で、イスラム過激主義のモハメド・メラ容疑者が生徒3人と教師1人を射殺した事件が発生している。それ以来、フランスを離れるユダヤ人が増えて来ており、イスラエルに移住したユダヤ人の数は、2014年には約7000人に上り、前年の2倍となっている。
さらに今回のフランス史上最悪の一連の襲撃事件は、同国の50万〜60万人のユダヤ人コミュニティーを大きな混乱に陥れており、フランスを離れてイスラエルに移り住むユダヤ人の数は、今後急増するのではないかと思われる。こうした動きはフランス在住のユダヤ人だけでなく、他のヨーロッパや米国に在住のユダヤ人にも広がる可能性が大きい。