イギリスがEUから離脱・47年間の加盟に幕
イギリスの行方は「自由貿易協定」の締結次第
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EUの会議場からイギリス国旗が取り除かれた。 |
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早くも今日から2月。
1月を過ぎると2月は「逃げる」、3月は「去る」といってあっという間に過ぎて、気が付いてみれば春爛漫の4月。時の経過が速くなっている時だけに、今年は桜吹雪の舞うのが一段と早く感じられるかもしれない。
日本時間の今朝8時、イギリスはEU(欧州連合)からの離脱という歴史的な説目を迎えた。1952年以来EUの中心的存在として欧州の統合に尽力して来たイギリスが、一番最初に組織から離脱することになるなど、想像していなかっただけに、3年半ほど前に国民投票でEUからの離脱を決めた時には、EU各国だけでなく世界の国々にとっても驚きであった。
あれからあっという間に3年半が経過、今日からはEUには属さない欧州では数少ない孤立した国の一つになったというわけである。私は、前からお伝えしてきたように、これはイギリスというかっての大英帝国の為してきた不徳が生んだ、カルマが発動する前触れではないかと思っている。
イギリスがこれから先、様々な困難に遭遇することになるのではないかと思うが、離脱に伴って発生するEU諸国との関税等に関しては、今年いっぱいは「移行期間」が設けられているのでイギリスでの市民生活には大きな影響はないはずだ。
問題はこの期間中に、EUとの間に貿易面での協定「自由貿易協定」を結ぶことが出来るかどうかという点である。これが出来なかったら、EU各国との間に関税を設けることになるため、貿易量は減ることは避けられず、人の行き来もパスポートを必要とし、通貨ポンドが使いにくくなるため、減少することは間違いない。
現に離脱前の1年間の自動車などの輸出量は20%近く減少しており、離脱を前に通貨ポンド安が発生しているため農作業などの必要な人材確保が難しくなっているようである。それだけでなく、かっての大英帝国の歴史に魅かれて移住してきたヨーロッパ諸国からの移住者も、ドイツやフランスへ移り始めているようである。
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EU離脱を喜ぶ人々。 しかし彼らは国民の半分でしかない。
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一番の心配はイギリスに属している王国の離脱である。イギリスは主権国家としては国であるが、そこに属しているイングランド、スコットランド、ウェールズ、さらには北アイルランドは主権国家ではないものの、それぞれが一つの国であり、権限の委譲による自治権を有しているのである。それゆえイギリスの別名は「グレートブリテン及び北部アイルランド連合王国」となっているのだ。
EU離脱の投票結果を見れば、これらの国々にける離脱賛成率は本国に比べて低く、特にスコットランドは賛成票は30%にも達していなかったほどである。つまり、イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドに住む人々の多くはEUに属することを望んでいたわけである。
したがって、年内に予定しているEUとの間の「自由貿易協定」が締結されなかったら、EU諸国との往来が一段と難しくなるだけに、4つの王国は不満が爆発する可能性があるのだ。特に心配なのはスコットランドである。
いずれにしろ、「自由貿易協定」が締結されなかった時には、通貨ポンドはさらに下落することは避けられず、国民の日々の暮らしが厳しくなることは間違いない。そうなれば、離脱派と反離脱派によって二分された国民の間の反発の度合いが増すことは避けられず、経済面だけでなく政治面でも厳しい状況に追い込まれる可能性は大である。
もしもこうした方向に進むことになるようなら、それは大英帝国が長年にわたって多くの国々を植民地として、たくさんのものを奪い取った不徳に対するカルマの発動だということになる。それだけに私は年内の「自由貿易協定」の締結は難しく、来年早々からイギリスは厳しい状況に置かれることは避けられないのではないかと考えている。
一方、イギリスが抜けたEUも難問を抱えることになりそうである。一つは、これから先EUを引っ張っていくのがドイツとフランスの2国になるという点である。今までイギリスを含んだ3カ国が引っ張り役であった時には、意見の食い違いが
生じても、どちらかに一国がついてまとめることが出来たが、2国ではそれが出来ないため、ドイツとフランス間の衝突リスクが発生しそうである。
もう一点は財政面である。イギリスはEU予算の約10%を拠出していたため、その穴をどう各国で負担を分かち合うか、各国とも財政難に陥っている時だけにもめそうである。いずれにしろヨーロッパがこれから先、揺れ動くことは間違いなさそうなので、それを頭に入れておいて、EUとイギリス間の「自由貿易協定」の協議の行方を見守ることにしよう。
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スコットランドの首都グラスゴーに集まったEU離脱に反対する8万人の市民
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