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ロシアとサウジの対立で原油価格急落
   懸念される世界経済に及ぼす悪しき影響

 
 

 
 


3月に入り急遽、原油価格が急落し、1バーレル当たり20ドルまで下落。

 

 
 

 
 


米国、ロシア、サウジの3カ国で、世界の原油産出量の40%を占める

 

 


新型コロナウイルスの感染拡大は益々勢いを増してきており、米国の感染者数はとうとう10万人を突破、イタリアの死者数も中国の3倍となっており、死亡率が10%を超してきたのも気になるところである。一方、イギリスではチャールズ皇太子に続いて、ジョンソン首相とウイルス対策大臣のハンコック保険相が感染するという異常事態が起きている。これには何か意味がありそうである。

こうした状況下、世界経済の先行きについて重要でありながら、新型コロナウイルスの発生で大きく取り上げらずにいるのが、原油価格の急落に関するニュースである。

かっては1バーレルが80〜100ドルしていた原油の先物価格は年々下がり続けていたが、ここ数年は、60ドル前後で安定していた。それがここにきて一気に30ドルを割り込み、つい数日前には20ドルまで急落する事態となった 。

急落の要因は、原油生産国の要であるサウジアラビアとロシアとの協調が崩壊したことであった。3月6日に行われた石油輸出国機構(OPEC)とロシアの会議において、サウジ アラビアはコロナの影響で世界的な需要が落ち込むとして生産の削減を提案。一方、ロシアは従来通りの生産量を維持することを主張して決裂。

それを受けてサウジアラビアは価格の低下を見込んで生産量を大幅に増やすことを決定。その結果、3月9日には1バーレル当たり48ドルであった価格が30%以上下落し、一時30ドルを切るところとなった。その後もその勢いは止まらず新型コロナウイルスのまん延による需要減予測も加わって、一時20ドルまで下落するところとなった。 (上のグラフ参照)

もともとアフガニスタンなど中東のイスラム教国の盟主であったサウジアラビアは、中東諸国に攻撃を加えるロシアに対して政治的に敵対的な関係にあり、原油の生産においてもライバル関係にあった。

 
 

 
 


急落の要因となったのは、生産量の維持を主張するロシアと
削減を主張するサウジアラビアの協調体制の決裂であった。

 
 

その後、2010年ごろ米国ではシェールオイルの生産が始まり、石油生産量でトップに立った。それを受けて、ロシアとサウジは米国のシェールオイルに対抗するために協調関係を築くこととなった。その結果、これまで対峙していた両国は生産量などについての会議では協調して来ていたわけである。

ところが、3月6日の会議ではロシアがOPEC諸国の減産に異を唱えて協調しなかったため物別れとなり、今日の事態となってしまったというわけである。

なぜロシアが異を唱えたかというと、ロシアの国家財政は原油の輸出が大きな収入源となっており、今年の予算は 原油価格1バーレル当たり42ドルを前提にした予算を組んでいたため、これ以下では予算割れとなってしまうことからOPECの減産案に協調することが出来なかったというわけである。減産による原油価格の維持は米国のシェールオイルを助けることになるのも、プーチン大統領には気に食わなかったようである。

そうした事情で生じた原油価格の暴落は我が国の様に輸入に頼る国では大歓迎であるが、産油国にとって一大事となっており、ロシア、サウジ、米国だけでなく、 イラクやUAEなど原油販売が国家収入の大黒柱となっている国々においては、国家財政を揺るがす大変な事態となっているのである。

産油量トップの3カ国、米国、ロシア、サウジが受ける悪影響の度合いを見てみると、まず米国は生産コストが高いシェールオイル会社の倒産が続出することになりそうであるが、それはあくまで民間企業の問題であるため、国家財政には 当面大きな影響を及ぼすことはなさそうである。

 
 

 
 


10年程前から生産が始まったシェールオイルで、米国は世界トップの産油国へ。
 しかし、シェールオイルは原油生産ニッ比べて、生産コストが高いため、価格が
50ドル以下になると、これから先、倒産企業が続出する可能性が大である。

 
 

一方、サウジアラビアは 国家財政の中心を原油販売に頼ってはいるものの、生産コストが1バーレル=10ドルと飛びぬけて低いため、価格低下は生産量を増やすことによって何とかなりそうである。とはいっても米国もサウジも原油価格の下落は決して喜ばしいことでないことは確かである。問題はロシアである。

上の図を見ればお分かりの様に、原油生産量はサウジアラビヤより多くなっているが、産出能力がほぼ限界に達しているため、これ以上生産量を増やせない事情がある 。それだけに、国家財政の主要な財源の一つである原油価格低下の影響が米国やサウジアラビアに比べて大きいことは確かである。

現にロシアの通貨ルーブルの対ドル相場は3月1日時点で1ドル=63ルーブルであったが、原油価格の急落を受けてルーブル安が急激に進んで18日には1ドル=80ルーブル と20%も落ち込んでいる。これは国民の生活用品を輸入に頼っているだけに、価格高騰につながるためロシア政府にとっては痛手である。プーチン大統領は現時点では強気の姿勢を貫いているが、何らかの手を打たざるを得なくなってくるに違いない。


そうした状況下、やはり一番に気になるのは新型コロナウイルスの先行きである。もしも、これから先コレラウイルスの影響で石油の需要が落ち込むことになれば、 3カ国だけでなく産油国の全てが受ける経済的損失は一段と大きくなるだけに、世界経済に与える悪しき影響が心配である。

どうやらロシア、サウジアラビア、米国の思惑で始まった「仁義なき戦い」による原油価格の先行き不透明感は、予想だにしなかった新型コロナウイルスのまん延がもたらす負のエネルギーによって、一歩間違うと世界経済崩壊へと向かう導火線となるかもしれない。 要注意である。

 
 

 
 


石油価格が急速に低下している中、世界の生産量の40%を占めている、
米国、ロシア、サウジアラビアの3カ国による駆け引きが加速してきそうである。
それが世界経済にとって良い結果をもたらせばよいが、逆になった時には大変だ。

 

 

 

下記表は3月31日14:00現在の最新の数値

 

 

国名
 
感染者累計

3月30日の
追加感染者数

死者累計


3月30日の
追加死者数

 


中国
 
81518人 +48人 3300人 +5人

イタリア
 
101739 4050 11591 1568

米国
 
164253 +22029 3170 +820

スペイン
 
87956 +14721 5982 +1734

ドイツ
 
66885 +4450 645 +212

イラン
 
41495 +6087 2757 +240

フランス
 
44550 +6975 3024 +418

韓国
 
9661 +125 158 +4

日本
 
1866 +87 56 +

世界計
 
785、807 +63161 37,820 +3837
 

 

 

 

 

 

 

 

 




 

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