欧米各国における新型コロナウイルスの発生が勢いを増す中、イタリアでは10日一日だけで977人が新たに感染し累計数は1万人を超し、死者数も168人増えて累計631に達する事態となった。
さらに注目すべきは報道では特に取り上げられていないが、死亡率が6.2%という高い数値となっている点である。
こうした異例な状況を受けてイタリア政府は国全体での無用な外出禁止令を発令する事態となっている。なぜイタリアがそこまでの事態に至ったのだろうか? 誰もが疑問に思っておられるのではないかと思うが、私が調べたところでは、どうやらそれには二つの要因があるようである。
その要因の一つは、今イタリアはギリシャと同様、国家財政が厳しい状態に置かれており、ここ数年、財政赤字の削減のために公立の病院を減らし、医療従事者も大幅に削減して来ていたことである。その結果、治療に当たる病院や医師が少ない状態と化しており、フランスのレゼコー紙によると、過去5年間に約760の医療機関が閉鎖しおり、医師5万6000人、看護師5万人が不足している状態となっていたようである。
この点は死亡率の高さに大きな影響を及ぼしているように思えるが、いかがだろうか。
もう一つの要因は中国からの出稼ぎ者数が多いという点である。イタリアでの感染拡大について、台湾の蘇煥智・元台南市長は2月27日、自身のフェイスブックで、イタリアの重要な繊維業生産地であるプラート(Prato)の中国人移民が感染源となっている可能性が大きいと指摘している。
蘇氏はイタリア政府は「メイド・イン・イタリア」の実態を世界に知られたくないため、感染源について言葉を濁しているとの見方を示している。なぜそのようなことをしているかというと、イタリア北部にあるプラートは世界有数のファッション都市で、ミラノの経済を支えているからである。
高級ファッションブランドのグッチ(Gucci)、アルマーニ(Armani)、プラダ(Prada)などの生産工場はプラートにあるが、中国系縫製工場の数は数千カ所に達しており、これらの工場のオーナーや従業員の多くは中国浙江省温州市の出身者であるのだ。
そのことが知れると、メイド・イン・イタリアとされてるグッチなどの高級ファッションが実は、イタリアに進出している中国企業による加工商品である実態が明らかになってしまい、その価値が下がることにつながると、イタリア政府は懸念しているようである。
こうした状況を裏付けているのが、イタリアがヨーロッパで唯一、中国共産党の主要政策、である巨大経済圏構想「一帯一路」構想への正式な支持表明である。
どうやら、イタリアの感染者数と死者の数の多いことの背景には、中国人観光客と春節以後に中国から戻った人々の多さがあったようである。