150カ国に広がる新型コロナウイルス。中でもヨーロッパ各国の感染者の伸びは益々勢いを増して来ており、1日の増加人数が1000人を上回っている国はイタリア、スペイン、ドイツ、フランスの4カ国に達し、米国も987人と急増し累計で5000人に迫っている。
こうした状況を受けて経済面での打撃を心配した株式市場は大混乱状態と化し、ニューヨーク市場のダウ平均値は3000ドル近く下げて三度目の記録更新となった。今回の下げは、
米連邦準備制度理事会(FRB)が金利をゼロにする「ゼロ金利政策」と、市場に74兆円規模の資金を投入するという前例のない異例の「量的緩和」を同時に
実施することを発表した直後だっただけに、市場に与えた驚きは大きかった。
どうやら株式市場は政府の実施した政策よりも、EUからの入国禁止措置による経済への影響の方が大きいと受け止めたようである。EU各国との間の人と物の移動が断たれることによる、影響の大きさを考えれば至極当然かもしれない。
それにしても、FRBは手持ちの「弾薬」を使い果たし、武器庫はすっからかんになってってしまっただけに、これからの先行きが心配である。
ダウ平均値の先行きについては、下落幅が約3万ドルから約2万ドルへ30%を超したので、この辺でいったんは底打ちとなるのではないかと思われる。しかし、これまでの急落で、市場参加者の損失額は相当量に達しているだけに、回復までに時間が掛かるようだと、再び売りが始まり更なる下落に陥ることになるかもしれない。いずれにしろ「博打相場」と化した市場への参加者は、これから先、眠れぬ日々が続くことになりそうである。
こうした株の動きとは別に、米国の市民の動きを見ていて私が気になったのは、今回のコロナ騒動で発生しようとしている急激な景気減速に対する不安感が、日本人が感じているレベルではなさそうだという点である。
というのは、読者の多くが見過ごしておられたことと思うが、先日の米国のABCニュースの中で、コロナの拡散で市民の移動が制限され始めてから、銃と弾薬の購入が急増したことを伝えていたからである。
短いニュースであったが、伝えられたのは、これまで1カ月に20丁程であった拳銃の売り上げが、なんと1日で60丁に急増しているといいう実態であった。またBusiness
Journalでは、新型コロナの拡大で銃の弾薬販売が2036%増加していることを伝えていた。
今年初めのコロナ騒動が始まるまでの米国では、日ごとに更新される株価の最高値で多くの市民は好景気気分に浮かれ、高価な住宅の購入に走っていたようである。そのため、住宅価格と家賃が高騰して来ていたため、低所得者には購入どころかアパート暮らしさえできない状況と化して来てのである。
その結果、街には路上生活者が急増し、大都市のメイン通りから離れた路上には、たくさんの路上生活者の姿が目に付く状況となっていたのである。それと同時に、車の中で生活する車中生活者の数も急増していたようである。まさに貧富の差が急拡大し争いの元となる「富める者」と「貧しき者」の二分化が進んでいたのである。
そうした状況を肌で感じておられた市民の多くは、今回の新型コロナウイルスの拡大で足が地についていない好景気が一気に崩れることになれば、この機に乗じて生活困窮者たちによる、うさん晴らしの暴動が発生するのではないかと、不安感を増して来ていたようである。
我が国のように何があっても暴動や動乱など心配ない平穏な国で暮らしていると、コレラの拡大も学校の休校で子供の行き場がなくなって心配だ、という程度で終わっているが、どうやら。米国ではそんな甘い状況ではなさそうである。
今年に入ってから1〜2月だけで14件の発砲による殺傷事件が発生している国だけに、今回のコレラの拡大が大規模なパニックや治安悪化に乗じた略奪や暴動へと進み、米国を揺るがす事態に至らないか気になるところである。