気になるシリア情勢緊迫化の行方
シリア難民ヨーロッパ国境へ殺到
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トルコに避難していたシリア難民は政治の道具に使われ更なる苦難に遭遇。
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難民たちはギリシャを目指した。しかしその先で待っていたものは!!
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新型コロナウイルスの感染者や死者の数が世界的規模で増え続ける中、新聞もテレビもウイルス、ウイルスで埋め尽くされている。しかし実は今、トルコとシリアとの紛争を巡って、ロシアやEU(欧州連合)各国を巻き込んだ情勢が一段と厳しさを増して来ており、一歩間違えば中東での新たな紛争が発生する可能性が大きくなってきているのである。
シリア北西部のイドリブ県におけるアサド政府軍と反政府軍の戦闘が激しさを増
しており、新たに発生した避難民が厳しい環境の中でテント暮らしを強いられている点については、先般「最後の戦場と化したシリア・イドリブ県」でお伝えした通りである。
昨日、戦闘激化が続く中、ギリシャ国境に向かおうとしていた難民が大変なトラブルに遭遇することとなった。それはトルコにおけるシリアからの難民受け入れが満杯状態となったことから発生したものである。シリアの北に隣接するトルコはこれまでシリアからの難民を受け入れ続けて来ていたが、その数は既に400万人近くに達し満杯状態となっていた。昨日のトラブルはそれが引き起こす要因となったのだ。
読者は今から5年前の2015年に、シリア難民がトルコ経由でヨーロッパ諸国になだれ込み、ギリシャをはじめ多くの国々で受け入れを巡って混乱が発生したことを記憶しておられるだろうか。その時の混乱を収めるために、ヨーロッパ各国はトルコに難民・移民をとどめてもらうことにして、そのための資金をトルコに提供したのである。
しかし、それから5年が経過した今、これ以上難民を受け入れられないとして、トルコは難民発生の要因となっているイドリブ県での戦闘を中止させようと、シリア政府に反政府軍への空爆を止めるよう要請するところとなったのだ。
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ギリシャに向かった避難民は新たな苦難に遭遇する事態となった。
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幼子を抱いた父親の姿は痛ましい。 泣きを見るのはいつも弱者である。
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しかし、アサド政府はその要求を一切受け入れずにいるため、トルコはイドリブ県における戦闘に参戦する姿勢を示し、軍隊をシリア領内へ送り込む事態となったのだ。ところが、アサド政府軍は撤退することなくトルコ軍に対して空爆を行い、先月末にはトルコ兵33人が死亡し多数の負傷者が出る事態となっていた。
こうした事態を受けて、トルコ政府はシリア軍がこれ以上戦闘行為を続けるなら、シリア軍に対して本格的な攻撃を開始すると明言する一方、トルコで暮らす難民に対してEU諸国
行きを促す行為に出ることとなったのだ。その結果、難民たちはヨーロッパへの入国が可能になったという「うわさ」を聞いて、難民の一部が隣国ギリシャをめざす事態が発生したのである。
しかし、ギリシャとの国境で難民たちを待ち受けていたのは、まさに戦場のような光景であった。新たな難民・移民の急増を恐れたギリシャ政府は、軍の兵士を動員し催涙弾と放水によって、入国を拒絶する手段に出たのだ。その結果、難民たちは入国はかなわず負傷者が出る中で退避する事態となった。幼い子供を抱えた難民の父親は「危うくこの子を亡くすところだった」と、強い憤りを語っていた。
こうした事態を十分に予測出来たはずのトルコ政府がなぜ難民をそそのかし、ギリシャへ向かわしたのか? それはシリアを支援しているロシアに対してEU(欧州連合)が強く働きかけて、シリア軍の撤退を実現させるためであったのだ。つまりロシア政府を動かすための切り札として一部の難民を利用したというわけである。
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今週中に開催されと思われるロシアとトルコの首脳会談の行方に注目である。
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さてこれから先はどうなるか、EUが再び難民
問題の発生を食い止めるためにロシア政府とシリア政府に働きかけをするか、もしもそうした時、果たしてロシア政府やシリア政府が要請を受け入れるかどうか。今回の反政府軍の最後の拠点となっているイドリブ県を攻撃することによって、シリアのほぼ全土を掌握しようとしているアサド政権が
。そう簡単に撤退を受け入れる可能性は小さそうである。
となると、これから先、シリア政府軍とトルコ軍の戦闘は本格化し大規模な戦闘へと進むことになる可能性は多分にありそうだ。そうなると、トルコはEUの一国であるだけに
、EUとロシアとの関係も一段と悪化することとなるかもしれない。この点が最も心配になる点である。どうやら、これから先、コロナウイルスだけに関心を奪われずに、シ
リラ情勢の推移もしっかり見守っていく必要がありそうである。
いずれにしろ、こうした事態に巻き込まれて泣きを見ているのがシリアの難民たちであることは間違いない。今はまさに弱き者が泣きを見る時代。もはや国連などの力ではそれを防ぐことが出来ない状況と化しているのだ。もしかすると、こうした悲惨な動きを見た天は「時の流れ
」を早めようとするかもしれない。その一つが今回のコロナウイルスのまん延であったのかもしれない。
それにしても、これだけ世界情勢が厳しさを増してく来ると、私自身の視力の衰えなど構っていられなくなってくる。20年間にわたって書き続けて来た役割を投げ出すわけにはいかないからである。これから先、必要と思われる記事は精一杯頑張って掲載させて頂くつもりなので、読者に置かれては、世界情勢の動きをしっかり把握して、未来予測に役に立てていただけたらと願っている。
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