パレスティナとの和平プロセスに変化
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国連の安全保障理事会でパレスティナとイスラエルの和平協議が
議論されることになりそうだ。安全保障理事会は国際連合の中で
最も大きな権限を持っており、事実上の最高意思決定機関である
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ユダヤ人国家・イスラエルは1947年の建国以来、富豪ユダヤ人の金の力によって、世界の主要国、中でもアメリカの政界を味方につ
けてきた。その結果、国防力、経済力を順調に伸ばし、領土も思い通りに拡張してきた。なんと言っても米国から核の開発のノウハウを密かに得て、核弾頭を保有したことはアラブ諸国に対して絶対的な力を保持するところとなった。
しかし、ここに来て国際社会における立場が、かってない厳しい状況に追いこまれようとしている。その要因の一つはイランと欧米露6ヶ国との間で行われてい
る核開発に関する協議が合意に向けて進んでいることである。
合意の内容次第では、将来的にイランが核を保有する道が開けることになり、イスラエルの核保有国という絶対的な地位が失せることになる。
また、イランに対する経済制裁が解除されれば、再び宿敵イランが経済的発展を遂げ、国際社会において発言力を増してくることになる。
イランは世界第4位の原油産出国、世界第2位の天然ガス産出国であり、教育水準の高い国であるだけにイスラエルにとっては大きな脅威である。またイラン
はパレスティナやシリアの後ろ盾となっているだけに、なおさらだ。
イスラエルが窮地に追い込まれようとしているもう一つの要因は、パレスティナの国際刑事裁判所への加盟が承認され、
イスラエルが半世紀にわたって、パレスティナからから領土を奪ってきた行為が裁判所の法廷で問われることになろうとしていることである。
イスラエル対パレスティナの和平協議の行くへにも大きな変化が生まれそうである。これまで両国の和平協議は主に米国が仲介する形で両国間協議で行われてきた。しかし、交渉は昨年(2014年)4月に決裂し、その後7月の2100人の死者
を出したガザ地区への空爆や、先のイスラエルの議会選挙で「
イスラエル選挙がもたらすもの」に記したように、ネタニヤフ首相がパレスティナ国家の樹立を認めないと公言したことで、完全に暗礁に乗り上げ、交渉再開の目処はまったく立たない状況となっている。
どうやららここに来て、パレスティナはもはや2国間の交渉での進展は望めないと判断し、国連での議論を経て国連主導の和平プロセスに持ち込もうと
、方向転換を決意したようである。
今、国連の安全保障理事会で行われている論議がその一歩となるのではないかと、世界の関心が集まっているのは、それゆえである。
国連での論議によって、国際社会からの批判が強まることでイスラエルが歩み寄らざるを得なくなるのがパレスティナの狙いであるが、その見通しがここに来て
明るくなってきたようである。その理由は二つあり、その一つはパレスティナの国際刑事裁判所への加入が叶ったことである。3年前、国連で「オブザーバー国家」の地位が認められ、それを足場にパレスティナは国際刑事裁判所への加盟申請をしていたが、4月1日に認可が下り、正式なメンバーとなることが出来たのである。
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国連主導の和平プロセスを主張するパレスティナの国連大使(右)と
両国間の直接交渉を主張するイスラエルの国連大使(左)
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国際刑事裁判所のメンバーとなったことによって、パレスティナはイスラエルによる非人道的な行為を裁判所に訴えることが可能となり、国際社会の場でおのれの意見を堂々と述べることが可能となったと言うわけである。それは、和平協議を進める上でパレスティナにとっては大変有利であり、イスラエルにとっては都合の悪いことである。なぜなら、これまでの武力を背景にしたパレスティナからの領土の切り取りは、明らかに国際法上の違法行為であるからである。
いま一つ国連の場での和平協議に光明が差してきている背景には、昨今の米国とイスラエルの関係悪化がある。オバマ大統領はネタニヤフ首相の和平交渉に対する姿勢に落胆しており、先のイスラエルでの選挙でネタニヤフ体制を崩壊させようと、密かに
対抗馬に選挙参謀を送り込んでいたという情報も流されていた。
結果的にはネタニヤフの勝利に終わったが、その決め手となったのが「パレスティナ国家の樹立を認めない」という右派勢力向けの一言であった。それだけに、オバマとネタニヤフとの関係の冷え込みは、これから先一層激しくなって
来ることが予想される。
今まで国連での「イスラエル対パレスティナ」問題の議論に際しては、米国はすべてイスラエル擁護に回ってきた。しかし、オバマ政権が続く限り、これから先は必ずしもイスラエル側に立つとは限らない雰囲気が産まれてきた。その点はパレスティナにとって明るい兆しである。
そうした状況の変化もあって、パレスティナは今行われている国連の安全保証理事会の席でも、国際法を適用し、著しい人権侵害の責任を追及していこうとしている。一方、イスラエルはあくまで当事者同士の和平交渉を目指すべきだと主張し、もしも、敵対的なテロ国家を樹立させようとするなら、防衛体制を固めて対抗することになると脅しをかけている。
「イスラエル対パレスティナ」のエルサレムを巡る争いは、もしも「ヨハネの黙示録」が伝えるハルマゲドン(世界最終戦争)が現実のものとなるようなら、その前哨戦となる可能性が高いだけに、しっかり見守っていく必要がありそうだ。
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