中国の中央銀行である人民銀行は10日、貸し出しおよび預金の基準金利を0・25%引き下げると発表した。利下げは、昨年11月と今年2月に続き3回目となる。企業や個人がお金を借りやすくするための金融緩和策であるが、半年間に3回の緩和実施は異例である。
今回の引き下げで、預金金利は2・25%、貸出金利は5・1%となったわけだが、世界の主要国の金利が軒並み0%前後にある中では未だ高金利である。しかし、長い間高金利が常識化してきていた中国にとっては異例な低金利で、欧米や日本と同様、中国もまた低金利時代に突入するところとなったことを示している。
中国経済が厳しい状況に向かっていることは、既にお知らせして来た通りであるが、今回の一連の金利引き下げの連発は、
歯止めのかからない景気の減速に対して、中国当局が強い焦りと危機感を持っていることを表している。一歩間違えば共産党政権の崩壊につながるだけに、 習近平も必死である。
昨年以来、中国の経済は落ち込んできており、景気の動向を示すGDP(国内経済成長率)は1〜3月期早々から、政府の年間目標率7%ぎりぎりまで減速してきている。比較的好調だった輸出も3月、前年同月に比べて15%と大幅に減速、4月もまた6・4%減速して歯止めがかからない状況となっている。
この様子では、今年のGDPが目標値を大幅に下回るは間違いなさそうである。
こうした景気低迷の主要な要因は昨年夏頃から始まった不動産市場の低迷である。中国経済のエンジン役であった不動産への投資の低迷は、幅広い産業の生産にまで影響を与えており、また個人の消費も鈍らせる要因ともなっている。
景気の低迷は地方都市ほど深刻となっている。問題は、地方都市の役人の出世はいかに経済成長率を上げるかにかかっていただけに、多くの地方都市において巨大な工業団地や公営団地が次々と建設されてきたことである。それらがここに来て一気に中断し、稼働しない工業団地や幽霊都市となった公営団地が、あちこちに出現している。
地方政府の不動産開発に資金を提供してきたのが他ならぬ「陰の銀行」(シャドウバンキング)であることは既にお知らせして通りである。
ここに来て、不動産開発が途中で頓挫するところとなったため、返済できぬ地方政府が続出、その結果、「陰の銀行」の倒産が次々と発生し始める事態となって来ている。
この点については改めて記すことにするが、先ずは、伝えられてる以上に、中国が厳しい経済状況に向かっていることを知っておいて欲しい。
経済の崩壊は必ずや中国を揺るがす大問題を引き起こすこととなり、その影響が最も大きく及ぶのは他ならぬ我が国であるからである。その時には、中国人観光客で賑わっている観光地は、一転して避難民で溢れることになるのだ。