シリアやアフリカ各地の難民が地中海で遭難し多くの人々の命が失われていることは、既にお伝えしてきている通りである。今ヨーロッパ各国は移民をどのような形で受け入れたら良いのか頭を悩ましている。難民の割当制が検討されているが、英国などが拒否しEU全体の合意が得られるまでには時間がかかりそうである。
そんな状況下、今度は東南アジアの難民問題が取り上げられ始めた。数日前から日本のテレビや新聞でも報道されているので、読者も上の写真はご覧になっておられるこ
とと思うが、なんとも悲惨な映像である。地中海では救助船によって救われる人々もいるが、今マラッカ海峡沖合で漂流している6000人を越す難民には、周辺国から十分な救いの手が差し伸べられずにいるのだ。
上の写真はミャンマーに住むロヒンギャ族という少数民族がタイの沿岸にたどり着いたものの、上陸が認められず他国に行くことを勧められ、タイ海軍のヘリから一時しのぎの食料品が投下された時の情景である。
体力の残っていて泳げる人々が命かながら海に飛び込み、食料品を手にしようとしている姿はなんとも悲惨である。難民たちはすでに2ヶ月以上も海をさまよっており、特別取材班が乗船して撮影した下の写真を見たら、読者にもその惨状が分かるはずだ。まさに生き地獄である。
ミャンマー西部には何世紀も前から、ロヒンギャ族というイスラム教徒の少数民族がおり、世界の中で最もひどい迫害を受けていると言われている。市民権すら与えられず移動を厳しく制限され、
中には収容所暮らしを強いられている
人々もいるようだ。そのため多くの人達がよりよい生活を求めて、国外に渡ろうと斡旋業者の口車に乗ってイスラム教徒の多いタイやマレーシアなどへの脱出を試みているのだ。
しかし、それらの国々も収容施設が既にほぼ満杯状態となっていて、予算の制約もあって次々とやって来る難民をこれ以上受け入れない状況となっているのだ。今はまだ他人事で済まされているが、我が国とて一端、隣国・中国で政権転覆につながる暴動が発生したときには、押し寄せる難民の数が桁違いであることを考えると、その時は想像を絶する地獄絵を見ることになりそうである。