勢力を強めるイスラム国
イスラム国(ISIS)に制圧されていたイラクの主要都市ティクリートを奪い返したばかりのイラク軍、更に北部のモスルの奪回に向かおうとしていた矢先、形勢は逆転し、首都バグダッドの隣に位置するアンバル州の州都ラマディーがイスラム国に制圧されてしまった。
ラマディーはフセイン元大統領の出身地でスンニ派の住民が多く住む町であるが、イスラム国兵士による虐待を恐れて多数の市民が首都バグダッドに非難を始めている。
ところがバグダッドでは、避難民の中にイスラム国の隊員が紛れ込んでいる可能性があるとして、バグダッド市民の保証人がいない人は市内に入れず郊外に留めおかれている。
自国の首都に避難できないのだから、なんとも悲惨なことである。
今回のイスラム国によるラマディー制圧には、新たな問題が生じている。
それはイラク軍が撤退した際に置き去りにした大量の武器や戦車などがイスラム国の手に渡ってしまったことである。
これは支援国・米国にとっても深刻な事態で、国防相のウオーレン報道部長はイスラム国の手に渡ってしまった武器の中には「戦車6両、車100台、多数の砲撃砲と大量の弾薬」などが含まれていると語っている。
その多くが米国製であることは間違いない。
武器が相手国に渡ると言うことは、自国の軍の戦闘力を弱めるだけでなく、相手の戦力を強めることにもなるのだから、事態は深刻である。その武器や弾薬を使って、首都バグダッドが攻められては、市民はたまったものではない。しかし、今回大量の兵器一式がイスラム国に渡ったことには、実は多くの人が気づかない重要な意味が隠されているのだ。
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首都バグダッドに向かって避難する人々
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彼らは自国の首都に避難することすら拒否されているのだ。
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イスラム国がイスラエルと米国の一部の勢力によって作られた組織であることは、「イスラム国とバグダディの実体」でお知らせした通りであるが、彼らが使用している武器や弾薬の中には米国製のものが多く含まれているのだ。
それらは密かにイスラム国を支援する勢力から、サウジアラビアなどスンニ派の国々を通して、非公式ルートでイスラム国側に渡されていたのである。
因みに、悲しいことだが車両の多くがトヨタ製であることは、上段の写真を見れば分かる。
これから先、イスラム国の所持する戦車や車両、武器弾薬に米国やその関係国製のものが多いことが、イラクやシリアに知られるようなことになると、イスラエルや米国の一部の勢力にとって都合が悪い。
しかし、今回のように占領の際にイラク軍が残した武器をイスラム国が手に入れたとなると、今後の言い訳になる。
米国国防相がわざわざ奪われた武器などの内容を公表した裏には、こうした意味が隠されているものと思われる。
全ての報道は裏読みをしなければ事の真相は見えてこないのが、今の世界情勢である。
ラマディー制圧から間もなくシリアで、今度は世界遺産で有名なパルミラがイスラム国に制圧されたニュースが流れている。これで、シリア領土のおよそ半分がイスラム国の支配下におかれたことになる。
それにしても、シリアとイラクの広い国土の多くを占領したイスラム国の戦闘力は凄い。
改めて、彼らの裏についている強大な勢力の存在を知らされた思いである。
これから先はイエメンやリビアなども含めて、中東諸国はますます混乱を極めていくことだろう。
大イスラエル国家樹立を願う輩たちは、今回の一連の都市制圧やイラン対サウジアラビアの対立の深まりを、ほくそ笑んでいることだろう。
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