中国の周近平主席がイギリスを訪れ異例な歓迎を受けたのは先週のこと。 今週はドイツのメルケル首相が経済界の要人を連れて中国を訪問。 エアバス機130機を中国に売却するなどの大型商談を進めるため
、要はチャイナマネーを求めたカネ稼ぎのための訪中である。
さらに来週にはフランスのオランド大統領が訪中することとなっている。いずれの訪問もみな主に、経済的利益を目的とするものであることは間違いない。 こうした動きを見ていると、これまでの中国における人権問題に対するヨーロッパ諸国の毅然とした姿勢は、どこに行ってしまったのかと思えてくる。
前回の周近平主席のイギリス訪問に対するイギリスの異常な歓迎ぶりが、イギリス国内でも不評を買ったことは「周近平主席の英国訪問」で記載した通りである。 メルケル首相の訪中はこの10年間に8度目となるが、今回の首相の訪中についても、そこまでする必要があるのかと、ドイツ国内から批判の声が上がっているようである。
今回の訪問に随行しているのは、機械メーカーや自動車メーカー、化学関連会社などであるが、排気ガス問題で世界的な物議を巻き起こしているフォルクスワーゲン社も含まれて
おり、中国国有銀行がワーゲン社に対して金融支援をすることになるようなので、ドイツにとっては中国様々である。 しかし、チャイナマネーを求めた、こうしたなりふり構わ
ぬ経済優先主義に対して、違和感を感じる人は多いのではないだろうか。
ドイツのテレビ局ZDFも、今回の訪問については批判的な報道をしている。 昨今の中国の経済停滞は一時的な現象ではなく、ドイツにとって中国が最高の時は過ぎただけに、首相自らが訪問する必要性があるのだろうかと疑問を呈している。
世界各国が金利をゼロ近くまで下げて資金を市場にばらまいているにもかかわらず、世界中の経済が低迷し浮上の気配は見えないままである。 それだけに各国とも、経済の活性化のために様々な手を打とうとしているわけであるが、それも程度もので、これ以上経済優先主義を強めるなら、カネのためなら何でもするの拝金主義にどっぷり浸かってしまうことになる。 そうなったら最後、国を挙げて地獄界に落ちることになる。