シリア空爆と難民問題
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各国の空爆で広がる死者と難民

 
 

 
 


ロシア軍による反政府勢力への空爆で逃げ惑う市民 (オーストラリアABC)

 
 

IS(イスラム国)壊滅に向けての動きが一段と激しさを増し、今やシリアにおける空爆はアメリカを中心とした有志連合からロシア、フランス、イギリスへと広がりを見せる中、攻撃の対象はISの拠点だけでなく、反政府軍にも及びそこに住む住民にとって 、この世が生き地獄と化してきている。 攻撃国がロシアであれアメリカであれ、フランスであれ犠牲者となるのは一般市民である。

数日前、ダマスカス郊外の反政府勢力の拠点に対して行われたロシア軍による空爆では、一般市民の住む住宅や学校が攻撃され、校長先生や 生徒、さらには幼い子供たちまで十数人の市民が犠牲となったようである。 ISの拠点にしろ反政府軍の拠点にしろ、そこにはアサド政府に対決する戦闘員だけが住んでいるわけではない。 一般市民も多くの子供たちも一緒に暮らしているのだ。

いくらテクノロジーが高度化したとは言え、高空を飛ぶ戦闘機から地上に於ける詳細な状況は識別できない。 従ってISや反政府軍の根拠地と考えて攻撃を加えたつもりでも、大なり小なり、被害が一般市民や罪もない子供たちに及ぶことは避けられない。 従って、各国の空爆回数が増 えれば増えるほど、民間人の被害もそれに比例し、住む家を失う人や多くの死者や負傷者が出ることになる。

その結果、内戦が始まってから来年3月で丸4年になろうとしているシリアでは、すでに150万人が負傷、死者の数は25万人に達し、その半分が一般市民 、1万2000人が子供たちである。 また、住む家を捨てた避難民は国外だけで450万人、国内を入れれば1000万人に達しようとしている。

問題はこれからさらに増えることになりそうな国外難民の受け入れ先である。 フランスの同時テロ発生以降、各国は受け入れに一段と厳しくなって来ており、国境に有刺鉄線を張り巡らして入国を拒む国も出て、各地で行き場を失った難民たちが、寒さの増す中一段と厳しい状況に遭遇している。

 
 

 
 


頭から血を流しながら乳飲み子を抱いて逃げる父親。
反政府軍とは関係ない一般市民が被害者となっている
 

 
 

 
 


こんな子供になんの罪があるというのか。 アサド大統領もロシアも
米国もフランスもイギリスも皆、こうしてカルマを積んでいくことになるのだ。

 
 

難民受け入れ策を堅持するドイツ

 
 

 
 


CDU(キリスト教民主同盟)の党大会で、難民受け入れの決意を語る
メルケル首相。 さすがは原発の全廃を国是とすることが出来た国の首相である。
( ドイツZDF )

 
 

すでに今年の受け入れ難民数が90万人に達しようとしているドイツでも、他国と同様右派系の政党やこれまで受け入れをしてきた 地方政府から、メルケル政権に批判の声が上がっている。 そんな中、15日に行われた与党のCDU(キリスト教民主同盟)の党大会で行われた、メルケル首相の難民政策に関する演説は実に素晴らしいものであった。

「 私たちはやれます、障害を克服できます。 受け入れの数に上限を設けたり、ドイツを閉鎖したりすることはしません。 自分たちを難民問題から切り離すことが出来るでしょうか、出来ません。 そのような行為は21世紀における分別ある選択肢とは思えません 」。 

多くの難問が山積する中、最終目的地として遠く離れたシリアやイラク、アフガンなどからやって来る人々を冷たく突き放すことは、道義的に許されることではなく、また分別ある選択肢でもないと、メルケル首相は1時間余に渡る演説の中で、難民受け入れに対する強い決意を語ったのである。

感銘を受けたのは私だけではなかったようだ。 党大会に参加したCDUの党員からなんと9分間にわたるスタンディングオべーション(立ち上がって拍手を送ること)が起き、演説に最大限の賛辞が送られ、首相の方針が採択されることとなったのである。

これから先、難民問題への対処が難しいことは間違いないが、テロ事件の発生で、ややもすれば協調性が失われ、己を守ることが優先されようとしている中で、 利他心を持って自分の強い意思を貫き通したメルケル首相と、それに心を一つにしたCDUの党員の団結力を見ると、さすがはドイツ、他国には決して真似の出来ないことだと感じ入った次第である。

EU(欧州連合)にしろユーロ圏にしろ、これから先、牽引していくのはドイツである。 もしもドイツの推し進めようとする政策に異を唱え、ドイツ と対決する国が数多く出てくるようなことになれば、EUもユーロ圏ももはやそれまで。 これから先、EUやユーロ圏の主導国としてドイツが立派にその任務を全うされることを願っている。

 
 

 
 


首相の素晴らしい演説にスタンディングオベーションで最大限の賛辞を
送る党員たち。  我が国ではとんと見たことのない風景である。

 

 




 

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