国境なき医師団病院の死者42人に
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10月のアメリカ機による爆撃で炎上する国境なき医師団の病院
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10月3日、アフガニスタンのクンドゥズにある「国境なき医師団」が運営する病院が、アメリカ機による空爆で破壊炎上し患者やスタッフなど30人が死亡した事故、読者も記憶に残っていることと思うが、その後、国境なき師団が確認を進めた結果、新たに12人の死亡を確認、死者の数は42人となった。
9・11同時テロ後、アメリカ軍の攻撃により都市が破壊され多くの戦死者が出たアフガニスタン。 戦闘終結後、今度はアルカイダやIS(イスラム国)などによるテロが頻発、今もなお混乱状態が続いている。 そんな悲惨な状況下、一つしか残されていなかった国境なき医師団の運営する病院が空爆されたわけであるが、死者数42名は大変な数である。
先月アフガニスタン駐留のアメリカ軍は、人為的なミスが主な原因だったという調査結果を発表したが、国境なき医師団はアメリカ軍による調査だけでは不十分だとして、独立した国際機関による調査を求めていくことにしたようである。
その背景に何か深い意味があるようであるが、公平な国際機関によってそれが明らかにされることを願うのみだ。 そうでなければ亡くなった人達が浮かばれない。 この事件に関するニュースに接するたびに私が強い違和感を覚えるのは、決して許されない病院への爆撃で多数の死者や負傷者を出したことに対する米国政府の冷ややかな対応である。
爆撃後、オバマ大統領の簡単な陳謝の言葉はあったものの、大変な過ちを犯してしまったという深い反省と、心からの詫びの気持ちは感じられなかった。 その後、こうして死者の数が42人にまで増えたというニュースが流れても、改めてコメントも発表されていないようである。 この程度のことは戦争にはつきものだと感じておられるようなら、もはやそれまでである。
いすれにしろ、米国とその国民が大きなカルマを背負うことは間違いない。 これから先、断末魔の叫びを上げて死んでいった42名の罪なき人々の強い怨念が、アメリカを覆うことになれば、最近の暖冬でワシントンでは桜が咲き始めたようだが、異常気象はさらに激しさを増し、銃の乱射事件も多発し、米国国民は等しく不安と恐怖におびえる日々を迎えることになりそうだ。 まさに因果応報、避けては通れない道である。
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今もなお治療を受け続けている負傷者。 彼らのアメリカに対する恨みの心は消えることはない。
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イエメンの悲劇・病院が消えてしまった
9ヶ月間に及ぶ内戦で2100万人が人道的支援を求める事態になっている
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アラビア半島南端のイエメンでもサウジアラビアと同様な悲劇が発生している。 イエメンにおいてサウジアラビアを中心とした有志連合国の支援を受けた政府軍とイランから支援されているシーア派の反政府軍との内戦が始まったのが今年の3月。
あれから9ヶ月がたとうとしているが未だ戦闘は続いており、最近はアルカイダやISも加わってよつどもえの戦いとなっている。 そうした状況下、首都サヌアの病院は100回を越す攻撃で、もはや安全な場所ではなくなって来ており、患者や医療スタッフが次々と殺害される深刻な状況となっている。
WHO(世界保健機構)によると、3月からの死者の数は延べ6000人、その半分が民間人で、内600人が子供たちとのこと。 平均すると毎日25人が殺害され125人が負傷する日々が8ヶ月も続いており、人口の80%にあたるおよそ2100万人が、人道的支援が必要になっているというから悲惨である。
その間一度、6月に和平会議が開かれたものの、双方の主張が平行線を保ったままで直接対話が実現できぬまま終わってしまった。 今回、1週間の停戦が実施され、15日から国連仲介の和平会議が開かれることになったので、その間無事停戦が続き、和平が実現することを望むばかりである。
もしも、今回の会議も決裂するようなことになったら、その先に待ち構えているのは、まさに「生き地獄」である。 ほとんど全ての病院や医療施設が破壊された国で、負傷者はどこへ助けを求めたら良いというのか。 そうならないことをひたすら願うばかりだ。
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