再びイスラエルの暴挙
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イスラエル人を殺害したとして逮捕されたパレスチナ人の家族が住む建物が
イスラエル軍によって爆弾で破壊され、家族が路頭に迷い、周辺の建物も被害を受けた。
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「動き始めたイスラエル」で記したように、今まで陰に隠れていたイスラエル
がとうとう中東戦線の表舞台に登場し始めた。 一方で、パレスチナ人に対する抑圧的行為は続いており、
23日にはそれに反発する襲撃事件で、イスラエル人とパレスチナ人4人が死亡する事件が起き、クリスマスを前に緊張が高まっている。
2週間ほど前には、イスラエル人に危害を加えたとして拘束されたパレスチナ人男性の家族の住む住宅を、イスラエル兵が爆薬で破壊するという、信じがたい暴挙が行われた。
実行犯の家を爆破し家族を路頭に迷わせるなどということは、我々日本人の目から見たら信じ難い行為であるが、EU諸国からも強い怒りと避難の声が上がっている。 こうした非道はこれまでにも何度も行われていたことであったようだ。 イスラエル政府がパレスチナ人を人間扱いしていない何よりの証である。
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イスラエル政府が行った、犯罪に関係ない
家族なども罰する行為は、国際法で禁止されている
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パレスチナ人が住み着いていた土地を、かって自分たちが住んでいた土地だという理由で占領し、イスラエルが国家を樹立
したのは第2次世界大戦直後。 その後、1948年の第一次中東戦争の結果、パレスチナはガザとヨルダン川西岸に分割され、領土は3分の1ほどになってしまった。
その後もイスラエルの領土拡大意欲は収まらず、財政力と武力で絶対的に勝るイスラエルは、両者の話し合いで領有権を決めることになっていたヨルダン川西岸の土地
を高い壁で囲み、次々と
農地を広げ、住宅を建設して他国から移住してくるユダヤ人を入植させ続けている。(下の図参照)
そうした行為が法的に許されることでないことを知っているEU(欧州連合)は、先日、パレスチナ人から奪った入植地で生産された野菜や果物に対して「イスラエル産」ではなく、「入植地産」とするようイスラエルに伝えている。 せめてもの制裁措置である。
こうした行為は国連も非合法だとしており、両者の平和的解決を望んでいるが、1年前に話し合いは決裂したままで
再開の目処はまったく立っていない。 このままではやがてパレスチナ人の暮らす土地は小さくなるばかりだ。
こうした理不尽な行為を財政面、軍事面で裏から支援しているのが米国であり、イギリスである。 両国はイスラエルに核兵器を渡すというとんでもない過ちを犯しただけでなく、こうして弱者であるパレスチナ人をさらに窮地に追い込み、紛争の種を蒔くことに間接的に協力してきているのである。
イスラエルからの爆撃が行われるのは「ガザ地区」に対してである。(「Waik in the Spirit」より)
揺れる米国のユダヤ系社会
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米国のユダヤ人のリベラル派の人々は、ネタニヤフ首相の
行っているパレスチナ人に対する抑圧は戦争犯罪行為だと反対している
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一体、こうした理不尽な振る舞いを他国に住むユダヤ系市民はどう見ているのだろうか。 私がかねがね関心を持っていた点である。 それに対する一つの情報を知ることが出来た。 米国に住むユダヤ系市民
の間で、祖国イスラエルに対する考えが大きく二分されているという、特集番組が放送されたからである。
世界中のユダヤ系の人の数はおよそ1380万人。 その内イスラエルに住む人は570万人、米国に住む人は530万人で、両国で80%を占
めている。 驚くのは米国にはなんとイスラエルとあまり変わらない程のユダヤ系住人が暮らしていることである。 彼らは19〜20世紀にヨーロッパから移住し
て来た人々の子孫である。
この530万人のユダヤ系米国人は大きく分けると「保守派」」と「リベラル派」に分かれる。実は今、中東情勢が緊迫化する中で、米国に於いてはこの両派で大きく意見が対立し、祖国を巡る深刻な亀裂が生じてきているのである。
保守派に属する人々は、ロックフェラー一族のような超富裕層を含めて経済的に恵まれ、米国社会の中で要職に就いているケースが多い。 それらの人々は、敵対する国々に囲まれた中東では強いリーダーシップが必要だとして、現在のネタニヤフ首相が行っている政策の正当性を認め、資金的な支援を続けるべきだと考えている。
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ホワイトハウスの前で、イスラエル
政府とそれを支える米国政府に抗議する
ユダヤ教正統派のラビ。 彼らはイスラエルの行為は神の教えに反すると訴える。
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一方、リベラル派に属する人々は、パレスチナの占領を終わらせることがイスラエルの安定と存続につながると
、保守派の人々とはまったく反対な立場に立っている。 また最近急増している若者たちを中心としたリベラルな団体「平和を求めるユダヤの声」の人々は、イスラエルが国際法に反してパレスチナの占領を続け、軍事力を振りかざして抑圧的政策を推し進めていることや、多額の資金が米国から送られていることに対して、強い嫌悪感を持っているようである。
ユダヤ系の人々は歴史的な見地から「アシュケナージ」と「スファラジー」とに分かれる。 アシュケナージはユダヤ教を信仰するという点ではスファラジーと一緒だが、血統的にはまったく異なるヨーロッパ系の人々で、純粋なユダヤ人ではない。 ネタニヤフ首相を始め我々の知っているユダヤ人、ロスチャイルドやロックフェラーなど超富豪や映画監督のスピルバーグ氏、フェイスブックの創始者サッカーバーグCEO、FRB(連邦準備制度理事会)のイエレン
議長などは皆、アシュケナージ系ユダヤ人である。
一方、スファラジーは血統的にユダヤの血を引く本物のユダヤ人である。 テレビで見る黒い服を着て、頭に丸い帽子をかぶった人々が、スファラジー系のユダヤ教正統派に属する人々である。 そうした人々の
間でもイスラエルに対する思いは揺れており、敵に囲まれたイスラエルを守るのは当然と考えている人もいる一方で、イスラエルがパレスチナ人に行っていることは、ユダヤ教の教えとはかけ離れた犯罪行為で、神の教えに反すると考えている人々もいる。
比率的にはこちらの方が多いようである。
これから先、ネタニヤフ首相率いるイスラエル政府は、パレスチナに対する抑圧を強めるだけでなく、イランやシリアなどの中東問題に関与してくることになりそうである。 その時には、米国の530万人のユダヤ人社会に
さらなる深刻な亀裂が生じ、両者間の対立が激化してくることが予想される。 彼らは米国社会に対して影響力が大きい人々だけに、これから先、米国社会を大きく揺るがすことになりそうである。
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イスラエルの暴挙のための資金が米国から送られているのは耐えられないと
語るリベラル派の団体「平和を求めるユダヤの声」のマシュー・バークマンさん
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