農家の先行きが心配だ
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広大な農地を耕作する北海道の農家の方は、これから先の気候異変が心配だ。
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先日、徳乃蔵に北海道の網走から一人の男性客が来られた。 15年ほど前に東京から移住されて現在農業に従事されておられる方で、なんとしてもカブレラストーンを目にしておきたくて、時間のやりくりをしてやって来ましたと語っておられた。 今この時期は農作業から解放された一時のようで、これから先は、いつ大雪が降るか分からないので、家を留守に出来なくなるとのことであった。 野菜育成のプレハブは積雪に弱く、早めに雪下ろしをしないとつぶれてしまうので、家を離れることが難しく
なるようである。
お話しをうかがって興味深かったのは、オホーツク海と太平洋に面した東海岸一帯の気候変動の話と化学肥料や除草剤による薬害の話であった。 私はかねてから世界各地で異常気象が発生している中で、
特に高緯度の米国北部や北欧、また我が国では北海道、中でもオホーツク海に面した東海岸地方一帯に、異常気象が顕著に現れていることをお伝えしてきた。
網走地方はその一角に位置しているわけであるが、この日お聞きした話はそうした私の考えを裏付けるものであった。 お話しをお聞きすると、この15年間に網走地方や知床半島の羅臼地方などの気候は大きく変動して来ており、特にこの3〜4年間はその度合いが一段と増して来ているようである。 集中豪雨の回数が増え、寒暖の差が激しくなり、降雪量も増してきているという。
読者の中には、寒い北海道は全域が雪の多いところと、勘違いしておられる方もおられるかもしれないが、元来、網走地方はそんなに雪の多い場所ではな
い。 それが近年、気温が上昇するにつれて年々降雪量が増し、降る雪の質も変化して湿気を含んだ重い雪となって来ているようである。
同じ雪でも湿気を含んでいると、雪掻きは重労働。 10〜20センチ前後の雪ならさして変わらないが、50センチを越すと重い雪は大変である。 またビニールハウスなどは倒壊する可能性が大きくなるので、農家の方はこまめに雪下ろしをする必要がある。 異常気象は太平洋に面した釧路地方にも及んでおり、釧路から来館された女性は、海岸沿いに住
んでいる人は最近のあまりに強い風に恐ろしさを感じておられるようです、と語っておられた。
こうした気候の変動がマスコミで大きく取り上げられずにいるのは、今のところ作物の収穫量が特段落ち込む状況に至っていないからのようだ。 雨の日が長く続き作物の生育が心配されても、その後に天気が持ち直し生育の遅れを取り戻すなどして、
これまでのところなんとか大きな減収に至らずに来ているようである。 しかし、天候不順は年々頻度とその度合いを増して来ているので、これから先、収穫量の落ち込みが心配だと語っておられた。
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来年もまた、雪解け後に蒔いた種が芽を吹き、順調に成長してくれるといいのだが。
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因みに、全国の生産量に対する北海道産の野菜類の比率は、大豆、にんじん類が30%、スイートコーン、カボチャ、そばが50%、小麦が65%、馬鈴薯が80%、インゲン、小豆が95%、てん菜は100%。 そんな北海道がこれから先、天候不順の脅威に晒されようとして
いることを考えると心配だ。
そんな状況下、TPP交渉の妥結を受けて、これから先、政府も農協も大規模農業を推し進めていこうと計画している。 しかし、大規模農業は人手を省くことが重要なポイントだけに、機械化をさらに進め、
これまで以上に農薬と化学肥料への依存度を増すことが避けられなくなってなってくる。
化学肥料と農薬の恐ろしさがその毒性にあることは、ここ半世紀
、田や畑からイナゴやバッタ、カエル、蛍などの昆虫たちが姿を消してしまったことを見れば分かる。
もともと米国政府が先導してきたTPPの大きな目的は、金儲けのためなら手段を選ばない米国の多国籍企業が、毒性の強い農薬や肥料、
さらには遺伝子組み換えによって作られた1年だけしか芽を出さない「種」の販売拡大を図ることであった。
今のところまだ日本では、中国で使われているような毒性の強い農薬は使われていないので、救われるがそれでも危険であることにはなんら変わりはない。 大規模農業を営んでいる方が自家用の野菜を別の畑で栽培しているのは、その恐ろしさを十分に熟知しているからである。
網走の男性は、スーパーやホームセンターで販売している除草剤は、既に南米や欧米では使用禁止になっていることや、最近の網走の海の汚染が増していることと、井戸水が飲めなくなってきている実体を語っていた。
化学肥料と農薬の恐ろしさはそればかりではない。
田や畑の土壌が、化学肥料や農薬に含まれたカドミウムや水銀、ヒ素といった重金属に汚染されると、粘りけがなくなってしまい大量の雨が降れば一気に流されてしま
うことである。 毎年耕す表層土壌は柔らかくても、その下にある土地は重金属によって堅くなってしまい、長雨や豪雨に見舞われると、上層部の柔らかい表土が流れてしまうことになるのだ。
山の木々が根元から倒れるのが目立つようになって来ているのもそのためである。
今年春先の
長雨と大雨に襲われた鹿児島の農家の人達が、その恐ろしさを身をもって体験している。 これから先予想される長雨や集中豪雨によって、農作物に被害が発生するだけでなく、種を蒔く土壌自体を失ってしまうことになるとしたら一大事だ。
天候不順が次第に強まって来ている北海道や新潟、鹿児島などで、農業を営んでおられる方を存じているだけに、これから先の農業の行く先が心配だ。 網走の男性も鹿児島の女性も無農薬農業に取り組んでおられるが、最後に生き残るのは、
生産性は低くなるがこうした無農薬農業を中心に行っておられる方になるのではなかろうか。
様々な形で食糧危機が間近に迫ってきていることを改めて感じる今日この頃である。
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「種まきする前に雪掻きで雪をかき分け、そのため手袋がすり切れる
時が来る」とホピの予言は伝えている。 最近の暖冬が一転し予言が
伝えるその時が、遠からずして来ることになるかもしれない。
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