読者もご承知の通り、24日に、トルコ軍のF16戦闘機によるロシア機の爆撃事件が発生した。 トルコ政府は今回の事故は完全な領空侵犯によるもので、5分間の間に10回にわたる警告を無視して飛行を続けたためにとった、当然の措置であるとしている。
一方、ロシアのプーチン大統領は爆撃機はトルコから1キロメートル離れたシリア領内上空6000メートルを飛行中であったと、強く反発している。 大統領の発言の中で衝撃的であったのは、今回の撃墜攻撃は「テロの共犯者たち」が背後から我々に突き刺した背信行為だ」、と述べている点である。 まるで、トルコのみならず欧米諸国が、裏でテロ組織とつながっていることを示唆しているかのような発言である。 本音が思わす口に出たのではなかろうか。
トルコはアサド政権に反対する反政府勢力を支援してきただけに、ロシアの反政府勢力に対する爆撃に対して強い反発があったことは事実である。 それが今回のロシア機に対する爆撃となったというわけである。 国際社会は、この問題が深刻な衝突に発展する恐れを懸念しているが、ロシア対トルコの潜在的な対立が表面化してきた面が強いだけに、今回の撃墜事故は一筋縄では収まりそうもなさそうである。
問題は、トルコがNATO(北大西洋条約機構)の加盟国である点である。 もしも、ロシアがトルコに対して何らかの軍事的行為に出たときには、NATOが動かざるを得なくなってくる。 そのために、昨日、ベルギーのブリュッセルで大使級会議が開かれている。 いずれにしろ、IS作戦でロシアと欧米が手を組むのではないかと見られていたが、どうやらその動きは、今回の爆撃事故でご破算となりそうである。
現に、米国を訪問中のオランド大統領と対談したオバマ大統領は、米国と有志連合は、対IS作戦でロシアと手を組むことはないと明言しており、オランド大統領がこの後に予定しているプーチン大統領との対談で、対IS協調作戦の話し合いがうまくいくかどうか予断を許さなくなっている。
実は、パリの同時多発テロがマスコミが伝えているようなものではなく、世界を恐怖に陥れ戦争を誘発するために「闇の勢力」が仕組んだ、はるかにおぞましい事件であったとされる情報も伝えられているが、それについては触れないことにしておく。 ただ、先日の同時多発テロが武装勢力ISによる、フランスを狙った単純なテロ事件でなかったことだけは、頭に入れておいて頂きたい。
難民問題やシリア情勢の緊迫化で国際社会の目が離れているのが、ウクライナ問題とパレスチナ問題である。 パレスチナ人とイスラエル軍との衝突は今もなお続いており、決して沈静化しているわけではない。 状況はウクライナ情勢も同じで、マスコミが取り上げないだけのことで、相変わらず水面下でウクライナとロシアの紛争はくすぶり続けている。
今回その一端が垣間見える事件が発生した。 クリミア半島に於ける大規模な停電事件の発生である。 昨年3月にロシアに併合されたクリミアでは、22日、クリミア併合に反対するウクライナのグループによって、ウクライナとクリミアを結ぶ送電線の支柱4ヶ所が破壊され、工場が閉鎖、学校も休校となるなど100万人を越す人々の生活に大きな支障が出ている。
ロシア政府が発電機を持ち込むなどして急場を凌いでいるが、影響は当分続きそうである。 問題はロシア政府がいかなる対抗措置に出るかであるが、政府関係者は、ウクライナへの石炭供給を停止する可能性を示唆している。 はっきりしていることは、これから先起きる様々な紛争やテロは、終結することがないと言う点である。 この点は私がこれまでに繰り返し伝えて来ていることなので、読者におかれてはご承知のことと思われる。
6月に観光客38人が死亡するテロが起きたばかりの、アフリカのチュニジアではまた首都チェニスで12人が死亡するテロが発生し、非常事態宣言が発令されている。 一方、NATO本部で大使級会議が開かれているベルギーのブリュッセルもまた、パリ同時多発テロ犯によるテロを警戒して、非常事態宣言が敷かれたままである。 どうやら世の中、ここに来て一気におかしくなってきたようである。