イラン産原油の購入を禁じるなど、イランに対して次々と敵対施策を続ける米国。今回、トランプ大統領が行ったのは、イランの精鋭部隊である「革命防衛隊」をテロ組織と指定するという異例の措置であった。
「革命防衛隊」はイランの最高司令官直属の部隊で、大企業を傘下に持ち経済界に強い影響力を持っている。このため、ヨーロッパ諸国の企業がイランの大企業と取引を行っている場合は、テロ組織との取引と見なされ取引企業の役員などに対して、入国拒否やビザの剥奪を行う可能性もあるのだ。
そのため、米国の議会からはトランプ大統領の今回の措置に対して懸念の声が挙がっている。またイランが反発し米軍をテロ組織として指定する事になったら、本格的な武力衝突に発展しかねないだけに、ヨーロッパ諸国からも反発の声が挙がりそうである。
なにゆえこのような異例の措置に踏み切ったかというと、それには二つの理由がある。一つは今イスラエルで行われている首相選挙において、ネタニヤフ氏が苦境に立たされていることから、彼を支援する必要があったという点である。先日ゴラン高原に対してイスラエルの自治権を認める発表をしたのと同じ理由である。
もう一点はトランプ氏自身の来年の大統領選挙に向けての支持を広げるためである。トランプ大統領がイスラエルやネタニヤフを支援するのは、キリスト教福音派やユダヤ系ロビー団体に媚(こび)を売るためであると同時に、彼の娘婿がユダヤ教徒であることも重要な要素になっている。
つまり、トランプ大統領が行っている政策の多くは、みな我が身のためということになってくる。それは、米国国民の目から見たら一目瞭然であるにもかかわらず、40%を超す国民が今もなお支持しているのだから、何ともはや驚きである。
これこそが、まさにいま英国と米国で表面化して来ている「心の素」による2分化現象の現れである。こうして覇権国家は衰退し消えていくのである。どうやら世界はまた一歩、ハルマゲドン(世界最終戦争)に向かって歩を進めることになったようだ。