1989年6月4日、民主化を求め広場を埋めた北京の学生たちが、軍の力でねじ伏せられた天恩事件から今年で30年。我が国をはじめ世界各国のマスコミが大きく取り上げる中、中国では全く報道されることなく終わってしまった。天安門広場における活動家による追悼行事はすべて禁止され、オンラインでの議論も厳しく規制されたままであった。
最近明らかにされた英国の外交文書は、中国軍が天安門広場における民主化運動弾圧のために殺害した市民の人数は10,000人を超した可能性が高いことを伝えている。今もなお世界各地で反政府運動に対する弾圧は続いているが、死者の数は数十人、多くても百人規模であることを考えると、1万人という数がまさに他に類を見ない恐ろしい数であることが分かる。
それだけの事件であったにもかかわらず、周金平政府は当時の政府の取った措置は正しいものであったとして、一切取り上げようとしない。それはなぜか? 中国の歴代の統一王朝が衰退・滅亡した歴史を知る周金平主席は、国民の反乱発生を何より恐れているからである。
中国を初めて統一した「秦王朝」から始まって、中国では、その後の王朝「漢」、「隋」「唐」がみな農民による反乱で滅亡している歴史については、読者もご承知の通りである。民衆や農民の生活が困窮し、その不満が高まると大きな混乱が起きる。それが中国という国で繰り返されてきた歴史なのである。
現在、その世界で第二位の経済大国となった中国という共産党王朝の下で、何が起きているかというと、党幹部や官僚による汚職が横行し続け、絶望的なほど貧富の格差が拡大してきているのである。その結果、経済発展に取り残された民衆が不遇な生活に強い不満を募らせており、中国全土で年間20〜30万件もの暴動が起きているのである。
経済発展で生活レベルを高めて来ていた都市部にすむ国民も、ここにきてトランプ大統領による貿易戦争で経済が一気に低迷して来たため、政府に対する不満が大きくなってきている。こうした都市市民によって体制に対する大規模デモが発生した場合は、低所得のまま取り残された農村部の人々による暴動と連動し大規模な反乱となる可能性は大きいのだ。
今のところ体制を揺るがすほどの大規模な反乱にまでは至っていないが、中国という国の歴史を振り返れば、周金平主席が恐れていることがいつ起きてもおかしくないのだ。だからこそ、中国で放送されているNHKのニュース番組で天安門事件の放送が始まった途端、画面が消されるという措置が取られているのである。
我々の常識では考えられないほど、現在、中国ではロシアのプーチン大統領も驚くほどの「政権批判」に対する「報道規制」と「言論の抑圧」が行われているのだ。読者におかれてはそうした実体を、しっかりと頭に入れておいて頂きたいものである。