いま香港は揺れに揺れている。香港政府が刑事事件の容疑者を中国本土に引き渡すことに道を開く「逃亡犯条例」の改正案を議会にかけ承認しようとしていることに、多くの市民が反対し抗議活動を続けているからである。
100万人規模の大規模デモが行われた9日に続いて、さらに12日には若者を中心とした10万人のデモが行われた。12日のデモでは議会前で警察とデモ隊が衝突、警察が催眠弾やゴム弾を使ったことからデモ隊員80人以上が負傷。 その結果、市民の政府に対する怒りが一段と増し、とうとう昨日のデモ隊の数は前代未聞の200万に達し、香港政府のトップである林鄭
月娥(りんていげつが)行政長官の辞任と改正案の撤回を求める事態となった。
今回、香港政府が改正しようとした法案は中国政府が求めているもので、この法案が通過するようなら香港にとっての命である「一国二制度」が事実上崩壊することになり、香港は中国に抱き込まれてしまうことになる。こうした一連の動きを受け、強気を貫いてきた林鄭
月娥・行政長官が審議の延期を発表。これから先、おそらく審議の延期に留まらず、法案の撤回に至るのではないかと思われる。
習近平主席の強気の姿勢は、こうして香港や台湾における反中国感情を盛り上げて来ているため、中国への統一化の動きをこれから先も強引に進めることになるようなら、武力衝突の発生へと進む可能性が出て来そうである。こうした事態は我が国にとっても大きな不安材料である。
いずれにしろ、いま中国は対米貿易戦争で経済的に落ち込みが続いており、格差による低所得者の反発がさらに大きくなりつつあるだけに、香港や台湾における反中国感情の盛り上がりは、周近平主席の立場を一段と厳しくすることになりそうである。