中国記者の怒り爆発
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南方週末の本社近くで言論の自由などを訴え、当局者らに連行される男性=10日、
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広東省の週刊紙「南方週末」が新年特別号で、「中国の夢、立憲政治の夢」と題し政治の民主化などを求める記事を掲載しようとしたところ、地元当局によって、「われわれはいつの時代よりも夢に近づいている」などと、現状を肯定する内容に大幅に書き換えさせられ
た上、「自由」や「民主」という言葉がすべて削除されるという事態が発生した。
これは広東省の共産党委員会の宣伝部長が書き直しを指示し、編集者が休暇に入っている隙に習近平総書記が唱える「中華民族の偉大な復興の夢」
に書き換えられたものである。
これに対して6日には、「南方週末」の編集委員会、ニュース部、経済部などの記者100人が抗議声明を発表し、ストも辞さない姿勢を表明。しかし、この声明は当局によって投稿から
わずか20分弱で削除されてしまった。翌7日には記者らを支持する市民が抗議活動を起こし、「言論の自由」を求めて当局を批判する異例の展開となった。
8日になって事態は新たな展開を迎えることとなる。「南方週末」に対する改ざん問題を権力によって押さえようと、党中央宣伝部は1本の論文を北京の主要4紙に載せるよう命じた。それは党の機関紙・人民日報の8日付けの社説に掲載した「中国でメディアが政府に対抗すれば、必ず敗者になる」という内容の記事であった。
つまり、中国のメディアは当局の傘下にあるのだから「その指示に従わねば潰されるぞ」という「南方週末」に対する脅迫文である。
掲載を強制された4紙のうち、北京主要4紙の一角を担う「新京報」は8日、宣伝部の命令を拒み、社説を載せなかった。すると同日夜、北京市の共産党宣伝部副部長の厳力強氏が「新京報」本社に乗り込み
、掲載を迫るところとなった。
「新京報」の幹部はこれに抵抗し、社長はこれ以上掲載を強制するなら社長を辞退するとまで主張。さらには「社長が辞めるなら自分も辞める」という記者が多数現れた。しかし、厳力強氏は強権を発動し
て掲載しないなら、新京報は解散することになると脅したため、9日付けの社説欄(通常は2
、3面だが20面)に原文の半分を掲載するところとなった。その後、新京報の社長は辞意を表明し今日に至っている。
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当局からの強制的な記事掲載に沈痛な思いに駆られる「新京報」の記者達
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これは中国には報道の自由、言論の自由が存在しないことを明白にするもので、決して聞き流し出来ることではない。記者たちは、今回の事件は氷山の一角に過ぎず、これまでもこうした記事の書き換えや受け入れ
難い記事の掲載の強要は数知れないくらい起きていた、と声明文の中で述べている。
この問題で、米国務省のヌランド報道官がこのほど「(メディアに対する検閲は)近代的な経済、社会の実現を目指す中国の理想と相容れない」と批判したのに対し、中国外務省報道官は「中国は内政干渉を認めない」と反論し、米中が対立の様相を見せ始めている。
中国において、こうした共産党政権下ならではの暴力的な言論統制が、日常的に為されて来ていることは誰もが承知のことであるが、中国国民だけでなく世界のマスコミが注目する中で、堂々と行われていることを知ると、改めて中国という国の
恐ろしさを知らされた思いで鳥肌が立ってくる。
なんとも情けないことだが、今我々の住む地球という星では、こんな国が世界の覇権国となろうとしているのである。これから先2013年から14年に向けて日中、米中間において領土問題や経済問題で大きな衝突が懸念されるだけに、今回の事件はよく
よく頭に留めておきたいものである。
中国の官僚らを昨年16万人処分
一方、中国共産党員や官僚による不正行為は少なくなるどころか年々増加し、2012年に処分した党員・官僚の数は昨年より2万人も増加、16万718人に上がったと党中央規律検査委員会が発表した。
昨年発生した、巨額収賄や職権乱用で党籍を剥奪された元重慶市の薄熙来氏や、前鉄道相らの幹部の腐敗事件は氷山の一角に過ぎなかったようである。日本の政治家や官僚諸氏も到底ほめられたものではないが、
悪知恵と狡猾さのレベルが高くないためか、これほど多くの極悪人が出ていないのは不幸中の幸いである。
年が代わってスタートしたばかりの習近平主席体制は今、こうした自由・平等を求める知識人たちだけでなく、公害の拡大や天候不順で農地を失った農民たち、また、
新疆ウイグル自治区やチベット自治区に見られる種族的差別に反発する人々、都市族と地方族という民族的差別に怒りを感じている出稼ぎ労働者たち
などの不満の爆発によって、いつ大規模な暴動に見舞われ政治的な大混乱に陥ってもおかしくない状況にあるのだ。
こうした状態が進むと、中央政権は国民の目を外に向けさせようとするる可能性が大きいだけに、尖閣諸島を巡るここ1〜2ヶ月の中国の船舶や航空機による
明らかな挑発的行為は、これからの日中関係にとって大きな不安要因である。我々は中国という国が共産党国家であることを、ゆめゆめ忘れないことである。
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