早くも第一四半期が終わり、今日から4月。
欧米やロシア各地の異常気象はさらに広がる一方、北朝鮮は「戦争状態突入」との特別声明を発表、そしてユーロ危機は新たな火が燃え上がろうとしている。どうやら、世情は
収まるどころか、ますます混沌の度を増しつつあるようだ。
欧州連合(EU)ユーロ圏諸国による救済が決まったキプロスで、先週末、休業を続けていた銀行の窓口が2週間ぶりに開かれた。心配されていた取り付け騒ぎや暴動も起きず穏やかなオープンとなったが、10万ユーロ(約1200万円)超の預金者は、預金の40%が強制的にカットされるということで、多くの市民がショックを受け
るところとなった。
1200万の預金と言えば、特別の富豪者でなくても多くの市民が対象となる。老後の生活や店舗の拡充などのために、コツコツと貯めた預金が突然40%もカットされてはたまったものではない。カット分は強制的にキプロス銀行の株式に転換されるので、無価値になるのではないとはいえ、
いつ倒産するか分からない銀行の株式など、誰も当てにする人などいない。
ところが情勢はここに来てさらに悪化してきた。AP通信がキプロス中央銀行や財務省当局者の話として報じたところによると、今回カットの対象となる大手銀行2行のうち、存続するキプロス銀行の大口預金の損失割合が最大60%に、また破綻処理に入っているライキ銀行については、80%になる見通しであることが分かったからである。
ここまで、大幅な預金カットが行われて果たして大口預金者は納得するであろうか?
預金者の反発は必至と思われる。もはや銀行の安全神話の崩壊である。一先ず落ち着いたかに見えるキプロス情勢は、再び不穏な状況に向かうことになるかも知れない。
他国に波及するキプロス危機
更なる懸念は、こうした事態がギリシャやイタリア、スペインなど財政危機に直面している国々の人々に
、銀行に対する不信感をつのらせることである。60〜80%削減という信じ難い数値を見たら、各国の預金者が自国の政府や銀行に対する強い不信感に襲われることは想像に難くない。「キプロスの預金カットは銀行救済のひな形になる」という
ユーロ圏財務省会合のダイセルブルーム議長(オランダ蔵相)の発言を改めて思い出すことになりそうである。
キプロスの財政破綻を先読みした金融市場では、同じユーロ圏に属しキプロスと同様、銀行の不良債権が膨らんでいるスロベニアの国債価格が暴落し始め、3月半ばには利回りが2%台だった2年物国債が2週間もしない間に6%台に急上昇している。また、イタリアの連立政権の樹立が難航しており、このままでは再選挙となる可能性が高く
、財政再建策の遂行が一段と難しくなっていることも、気になるところである。
さらに懸念されるのは、ドイツと並んでユーロ圏の模範国であったフランスの失業率がここに
来て、10%を超え、歴史的な数値が目の前に迫っている点である。どうやら、フランス経済もスペイン、イタリアと同様、赤信号が灯り始めたようである。あの
したたかな中国人旅行客が、「パリ市内の観光は物騒なので気をつけよう」とささやきあっているそうだから、首都パリの景気は相当厳しい状況になっているようである。
ロシアや米国では4月に入ろうとしているというのに、まだ大雪や吹雪に見舞われている。いつもなら満開で花見の人々で埋まるワシントンの桜並木も、今年はまだ蕾のままの状態が続いている。日本にいては分からない異常気象を世界の人々は目と肌で感じている。