2月の札幌講演会を終えた後、後援会スタッフの方々と会食をするために、集い処「えん」におじゃました。そこは、札幌講演会のスタッフとして長い間
ご支援して頂いている斎数賢也氏の経営するお店である。このお店の2階は小さな画廊になっており、写真展や絵画展、装飾品の展示会などが開催されている。
私の写真も展示させて頂いたことのある画廊であるが、訪れたその日そこには杉吉貢・画伯が描かれた珍しい絵巻が展示されていた。その絵は縦幅2メートル、横幅9メートル程の白地の布に墨絵模様で描かれたもので、息を呑むような作品であったが、驚いたのはそこに描かれている
絵の内容であった。
題名は「5百羅漢図」で「羅漢」とは阿羅漢(あらかん)の略で高貴の修行者を表す言葉である。絵は6場面に分かれており、そこには地獄に落ちた人々が
塗炭(とたん)の苦しみから脱却する過程が物語り風に描かれていた。描かれている人物の数はおよそ500体、地獄に落ちた亡者たちが己の過ちに気づき、聖者に導かれて
厳しい修行僧の道へと進む過程を描いたものではないかと拝察された。
杉吉画伯は北海道・夕張郡由仁町の出身で東京で活躍された後、現在は札幌に戻られて、墨絵や細密画、水彩画など幅広い分野で活躍されておられる50歳代の方である。なにゆえこのような絵を描かれたのか詳しい経緯は分からないが、斎数氏の話では、2011年の東日本大震災の後、
画伯は突然こうしたヴィジョンを見せられたようで、直ぐに描こうとしたが、なかなか描くことが出来ずにおったところ、昨年の9月になって筆をとることが出来るようになられたとのことであった。
今の世の中、あまりにも物質至上主義に陥っているため、死後の住処である霊界に戻ることが出来ず、低次元の幽界や地獄界に落ちていく魂が続出している。私には、杉吉画伯がこうした特殊な絵を描くことになった背景には、これから先に多発する巨大災害で地獄へと落ちて行く人々への警告が秘められているよう
で、戦慄を覚えずにはおれなかった。
「地獄界」とは「死後の世界」の中でも最も次元が低く、波動の粗い世界である。しかし、ここに描かれているのは地獄界の中でもまだ入り口の世界で、この世で沢山の人を殺したり、権力や地位を利用して悪さの限りを尽くした魂が行き着く
最下位の世界ではない。この絵に登場する人々は、それほどの悪者ではなく、単に、「死後の世界」など信ぜず自己本位の物欲、名誉欲にとらわれた生き方をした者たちのように思われる。
それゆえに、改心さえすれば天上界に向かって進むことの出来る魂である。この絵には、そんな亡者たちの魂が阿鼻叫喚の苦しみを味わった後、聖者の声に耳を傾け、己の非を悟り、光の世界へと向かっていく姿が描かれているようだ。地獄に落ちたことを悔やむ仲間を指さして笑う姿が描かれた最初の場面〈写真@)から、自身が
阿鼻地獄の辛苦を味わう場面へと移り、やがて先に進むにつれ、
登場する人物の中に己の人生を悔いて改心し、救いを求める人々の姿が次第に多くなっていく。
写真B以降は、手を合わせ天を拝む亡者の数が増えているのがそうした流れを示している。4枚目の光輝く聖者を取り囲んだ魂たちの笑みを見ると、思わず救われるような気持ちになってくる
。しかし、作者によると、満面笑みの魂も実は泣きながら説法を聞いているのだという。きっとこの涙は悔恨
・懺悔(ざんげ)の涙と同時に「光の世界」へと向かうことが出来た歓喜の涙でもあるようだ。
最後の写真Eには、導きの聖者のあとを追って阿羅漢への道を進む姿が描かれている。先頭に立つ聖者は画伯の義理の祖父に当たる方にそっくりで、作者
は生前会ったことがなかったが、後からそれが分かって大変驚かれたとのことである。
私には、この絵はその祖父が描かせたものに違いないと、感じられた。
私にとって驚きであったのは、作者が昨年秋になって急遽この絵を描くことになったという点と、私の講演会の当日に斎数氏の画廊にこの絵が展示されていて、タイミング良く拝見させて頂くことが出来たことである。
これから先、自然災害や動乱、戦争などが次々と発生してくる可能性が大きいだけに、もしも死に遭遇した時に、こうした地獄の世界に陥ることがないよう、
画伯は一人でも多くの人々に気づきを与えるために描くことになったのではなかろうか。私が拝見させて頂いたのも、広報役としての使命があったから
に違いない。
有り難いことに作者の特別の計らいで、墨絵を撮影させて頂くだけでなく、こうしてHPに掲載させて頂いたり、講演会で映写する許可を頂くことができた。杉吉画伯にはこの席をお借りして心から感謝申し上げる次第である。また、短時間でフラッシュを用いて撮影したため、
作品の素晴らしさを再現することが出来ず、写真ごとに色合いがまちまちになってしまったことを、深くお詫び申し上げる。
札幌市近在にお住まいの方は2月26日まで展示されているようなので、是非足を運んでご自身の目で確かめてみて頂きたい。必ずや心に感じるものがある
に違いない。いざという時「光の世界」へ直行するのにきっとお役に立つはずである。なお、集い処「えん」の場所は下記の通りである。
札幌市西区発寒1条3丁目3−23 TEL・ 011−661−9611 水曜日休日