このほど閉幕した全国人民代表大会(全人代)で、中国国内の食糧安全保障が議題となり、出席した代表から、中国の食糧自給率はすでに90%以下にまで落ち込んでいると懸念する声が上がった。中国政府は、食糧(米、麦、トウモロコシ、イモ、豆などの穀類)自給率95%を安全線としてきただけに、今後、麦や大豆など食糧安保が、政権にとって頭の痛い問題となりそうである。
中国では、これまで牛肉など食べることのなかった人々が、生活が豊かになったために街に出掛けては肉を多く食するようになって来ている。その結果、麦やトウモロコシは直接人間の腹に入る代わりに、牛の飼料となって
牛を成育させ、その肉が人間に食されることになる。そのため、麦やトウモロコシは5倍も6倍もの量が必要になってくる。
しかし、繰り返されてきた自然破壊と、その結果発生してきている異常気象によって、中国の耕地面積は減ることはあっても増えることはない。それゆえ、これから先、中国の自給率がますます減少していくのは間違いない。問題は、自給率の低下を防ごうと、食糧の増産に躍起になるあまり、人体に悪影響を及ぼす農薬と化学肥料をますます大量に投与することである。
これまで何度も記してきたように、中国全土に渡って田畑には危険な農薬がまかれ、川には汚染物質が垂れ流されてきている。その実体を表すように、中国の主要な耕作地である広東省域内の珠江デルタ地帯
では、40%の耕地が銅や亜鉛、鉄などの重金属に汚染され、そのうち内の10%は「甚大汚染」になってきている。また、広州・香港・マカオを結ぶ珠江デルタ地帯では、銅は基準値の5199倍、鉄は178倍、亜鉛は3.9倍が検出されているというから恐ろしくなってくる。
先日話題を呼んだ、上海市の飲用水の水源である黄浦江から回収された1万頭近い豚の死骸も、ブタへの抗生物質の濫用が指摘されている。「病気のないブタにも抗生物質を、病気のブタにはさらに多種の抗生物質を投与することが原因」だというのだから、恐ろしくなってくる。
今日のニュースでは、四川省眉山市で川に不法投棄された千羽あまりのアヒルの死骸が報道されていた。
こうした状況下で、これから先ますます危険な農薬、抗生物質、化学肥料が大量に使用されることになれば、中国の人々は重金属類によって一段と汚染された食料を日常的に食することになるわけであるから、
致命的な病気や重度の障害の発生が急増してくることは火を見るより明らかである。それは政府や共産党に対する怒りとなって、各地で暴動を引き起こすこと
につながるだけに、由々しき問題である。
汚染された穀類やそれらを食して飼育された牛や豚、鳥などの肉類は隣国日本にも大量に入ってくるのだから、対岸の火事では済まされない。
週刊誌には「中国人も食べない日本向け食品」リストとして、上海ガニ(重金属、抗生物質)、肉まん(豚の屍肉)、ウーロン茶(殺虫剤)、卵(防腐剤)、イチゴ(成長ホルモン)、ソーセージ(亜硝酸塩)などが紹介されている。
とにかく、中国産の食品は出来るだけ避けることだ。
それにしても、PM2.5や黄砂で汚染された大気を飛ばされた上に、安さを売り物にした
危険食品で毒されてはたまったものではない。その中国政府は、習近平国家主席のロシア訪問で、ロシアから潜水艦4隻と戦闘機24機を購入する契約を締結、さらに、地対空ミサイル「S400」や空中給油機などの購入や技術協力でも、中ロの間で近く合意する見通しだという。
「自国の領土や国民の安全を守るため」、これは戦力を拡充しようとする国が主張する決まり文句である。しかし、その守ろうとする国土が
まき散らし、垂れ流しで汚染され、土壌も空気も人の住める状況ではなくなろうとしているときに、その対策費を惜しんで巨額の軍艦や戦闘機を購入して「何が国土防衛か?」である。
そんな国に住む中国人も気の毒だが、隣国日本もまた、早見の桜や株価の上昇に浮かれていたら、とんでもないことになりそうだ。