EUが財政削減を目指す緊縮路線から雇用と成長戦略へと政策転換を打ち出した。ギリシャやスペイン、ポルトガルといった南欧諸国だけでなく、フランスやオランダまでが緊縮施策の推進によって経済の悪化が一段と鮮明になり、失業率が2桁台に乗ってきたことに対応するためである。
OECD(経済協力開発機構)の最新の予測でも、ユーロ圏の今年の経済成長率は半年前の予測値マイナス0.1%からマイナス0.6%へと下方修正されており、このままではドイツ以外の全ての国々がこの秋以降、マイナス成長へと陥りそうな気配である。
このため、緊縮路線から雇用と成長を目指す路線へと政策転換をせざるを得なくなった来たわけであるが、ヨーロッパ委員会は昨日の会合でフランス、スペイン、オランダ、ポーランド、ポルトガル、スロバニアの6ヶ国に対して、財政再建目標の達成期限を2年間延長することを決定したというわけである。
その結果、年間の財政赤字をGDP比3%以下に抑えるという緊縮政策が、事実上外されることになるために、雇用と成長の多少の改善と引き替えに、2年後の財政状況が一段と厳しくなって来ることは間違いなさそうである。
問題は、こうした状況を国際的な格付け機関がどう判断するかであるが、彼等が財政状況を重要視する立場を変えることは考えられないので、各国の評価をさらに引き下げ、EU危機が再現される可能性は大きくなってきそうである。
一方、成長戦略への転換に対し、ドイツは厳しい考えを持っているだけに、財政削減の手綱のゆるめ方に対して、今後、「ドイツ対他のユーロ諸国」の水面下の葛藤は次第に高まって来そうである。いずれにしろ、世界恐慌の発生までいかに時間稼ぎが出来るかどうか、と言う状況に変わりはなさそうである。